月影に咲く、一輪の華

遥愛と別れたあと――。

星羅は、一人で帰り道を歩いていた。

夕方の風が頬を撫でても、頭の中はずっと同じことを考えている。

――私は、はるちゃんが好きなのかな。

今までなら、そんなことを考えるだけで終わっていた。

でも今日は違った。

遥愛の隣にいる時の自分。

手を繋いだ時の嬉しさ。

「もう遠慮しません」と言われた時の、胸が跳ねる感覚。

そして――。

遥愛が傷つけられた時の、あの恐怖。

誰にも触らせたくないと思った。

自分が傷ついてもいいから、遥愛だけは守りたいと思った。

星羅「…………」

胸に手を当てる。

星羅「……やっぱり」

その瞬間、答えがすっと落ちてきた。

星羅「私……はるちゃんが好きなんだ」

口にした途端、顔が熱くなる。

でも、不思議と怖くなかった。

むしろ――。

嬉しかった。

星羅「……そっか」

ずっと探していた答えは、こんなに近くにあった。

倉庫へ戻ると、星夜がすぐに気づく。

星夜「……姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「決まった?」

星羅「…………うん」

星夜「誰?」

星羅は少し恥ずかしそうに笑う。

そして――。

星羅「……はるちゃん」

星夜「…………」

一瞬だけ寂しそうな顔をした星夜だったが、すぐに笑った。

星夜「そっか」

星羅「……うん」

星夜「姉ちゃんが自分で決めたなら、それでいい」

星羅「ありがとう」

星夜「ちゃんと幸せになれよ」

星羅「……うん!」

その会話を、少し離れた場所で夜凪が聞いていた。

夜凪「…………」

星羅がこちらに気づく。

星羅「夜凪……」

夜凪「……聞こえた」

星羅「ごめん……」

夜凪「謝らなくていい」

星羅「…………」

夜凪は少しだけ笑う。

夜凪「最後まで、ちゃんと自分で決めたなら、それでいい」

星羅「夜凪……」

夜凪「俺は……」

一度言葉を止める。

そして星羅の頭へ、そっと手を置く。

夜凪「好きになれてよかった」

星羅「…………」

夜凪「だから、笑ってて」

星羅の目が潤む。

星羅「……ありがとう」

夜凪「うん」

夜凪はそれ以上何も言わず、その場を離れた。

その背中を見送りながら、星羅は胸がいっぱいになった。

そして――。

スマホを取り出す。

遥愛の名前を開く。

星羅『はるちゃん』

送信。

すぐに返信が来る。

遥愛『はい?』

星羅『今度、ちゃんと伝えたいことがある』

遥愛『……分かりました』

星羅『楽しみにしててね♡』

遥愛『はい』

星羅はスマホを胸に抱える。

もう逃げない。

誰かを傷つけることを恐れて、自分の気持ちまで隠したりしない。

みんながくれた想いを大切にしながら――。

自分の好きな人を、自分の意思で選ぶ。

その覚悟を、星羅はようやく決めた。