月影に咲く、一輪の華

遥愛へ送ったメッセージ。

『はるちゃん、今日会える?』

送信してから、星羅はスマホを握ったままじっと画面を見つめていた。

ピコン。

星羅「……!」

遥愛『はい。大丈夫ですよ』

星羅「……よかった」

思わず頬が緩む。

遥愛『どこか行きたいところがありますか?』

星羅『ううん。今日は、はるちゃんと話したい』

その返信を送ってから、星羅は自分の胸に手を当てた。

――やっぱり。

ただ会いたいだけじゃない。

ちゃんと、自分の気持ちを知りたい。

しばらくして、遥愛から場所が送られてくる。

星羅「……行ってこよう」

星夜「姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「今日、はるちゃんと会うんだろ?」

星羅「うん」

星夜「……ちゃんと自分の気持ち、見てこいよ」

星羅「…………」

星羅は少しだけ驚いた顔をして、それから笑った。

星羅「うん。行ってくる」

そして――。

待ち合わせ場所。

遥愛「星羅さん」

星羅「はるちゃん!」

姿を見つけた瞬間、星羅の顔がぱっと明るくなる。

小走りで近づいて、そのまま遥愛の腕にくっついた。

星羅「会いたかったぁ」

遥愛「……俺もです」

星羅「…………」

その一言だけで、胸が大きく鳴った。

遥愛「今日はどうします?」

星羅「……少し歩きたい」

遥愛「分かりました」

二人で歩き始める。

しばらく無言だったけれど、星羅は繋ぎたいと思った。

でも今日は、自分の気持ちを確かめに来た。

だから、いつものように何も考えず甘えるのではなく――。

星羅「……はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「手、繋いでもいい?」

遥愛「…………」

遥愛が少し驚く。

けれど、すぐに手を差し出した。

遥愛「もちろんです」

星羅「……ふふっ」

指が絡む。

その瞬間――。

胸の奥が、じんわり温かくなった。

星羅「…………」

遥愛「どうしました?」

星羅「ううん」

星羅は繋いだ手を見つめる。

そして、ゆっくり口を開いた。

星羅「私ね……最近、はるちゃんに会いたいって思うことが増えた」

遥愛「…………」

星羅「昨日も、今日も」

少し照れながら笑う。

星羅「電話したくなったり、メッセージ来たら嬉しくなったり……」

遥愛は黙って聞いている。

星羅「みんなのことも大好きなの」

遥愛「はい」

星羅「でも……」

そこで星羅が足を止めた。

遥愛も止まる。

星羅「はるちゃんのことを考えた時だけ、なんか胸が苦しくなる」

遥愛「…………」

星羅「これって……」

星羅は自分の胸に手を当てる。

星羅「好き、なのかな」

遥愛はすぐには答えなかった。

そして――。

繋いだ手を、優しく握り直す。

遥愛「……俺は、そうだと思ってほしいです」

星羅「…………」

遥愛「でも、答えは星羅さんが決めてください」

星羅「うん……」

遥愛「俺は待ちます」

星羅は遥愛を見上げる。

優しい。

でも、もうただ待っているだけの顔ではない。

遥愛「……ただ」

星羅「?」

遥愛「俺も、もう遠慮しません」

そう言って、遥愛が少しだけ距離を縮める。

星羅「……っ」

遥愛「星羅さんに、ちゃんと俺を好きになってもらいたいので」

星羅の心臓が、また大きく跳ねた。

そして――その瞬間、星羅はようやく分かった。

自分が本当に欲しかったのは、みんなに好かれることじゃない。

自分が、一番会いたいと思う人に。

自分も選ばれたいと思っていること。

その相手が誰なのか。

もう、星羅の中ではほとんど答えが出ていた。