月影に咲く、一輪の華

夜凪と話したあとも、星羅はしばらくその場から動けなかった。

星羅「…………」

頭の中では、夜凪の言葉が何度も繰り返されている。

――最後まで俺も諦めない。

今までの夜凪なら、絶対に言わなかった。

だからこそ、胸が苦しい。

星羅「……みんな、本気なんだ」

その日の夜。

倉庫に戻ると、星羅はソファーに座ったままぼんやりしていた。

豹牙「どうした?」

星羅「……考え事」

來夢「まだ悩んでる?」

星羅「うん」

星羅は膝を抱える。

星羅「みんなの気持ち、ちゃんと大事にしたい」

朔夜「……うん」

星羅「だから、ちゃんと私も自分の気持ちを決めたい」

黒羽「焦らなくていい」

星羅「ありがとう」

少しだけ笑った、その時。

スマホが震える。

星羅「……!」

画面を見る。

遥愛『今日はゆっくり休んでくださいね』

たった一言。

なのに、星羅の顔が一瞬で緩んだ。

星羅「…………ふふっ」

夜凪はその変化を見逃さなかった。

けれど、何も言わない。

ただ静かに星羅を見つめる。

星羅は返信を打つ。

『はるちゃんもね♡』

送信。

すぐに返信が来る。

遥愛『はい。おやすみなさい、星羅さん』

星羅「……おやすみって」

星羅はスマホを胸元に抱える。

星夜「姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「今、誰から連絡来たか聞かなくても分かる顔してる」

星羅「……えへへ」

豹牙「分かりやす」

星羅「だって……」

言いかけて、星羅は止まる。

「だって、はるちゃんだから嬉しい」

そう言いそうになった。

けれど――。

その言葉を口にすることが、今までとは違う意味を持つ気がした。

星羅「…………」

自分の胸に手を当てる。

遥愛を思い浮かべるだけで、胸が温かくなる。

会いたい。

話したい。

笑ってほしい。

そして――。

誰かに傷つけられた時、怖いくらいに守りたくなった。

星羅「…………私」

ぽつりと呟く。

星羅「……もう、分かりかけてるのかな」

夜凪が静かに目を伏せる。

その言葉を聞いても、何も言わなかった。

ただ――。

星羅が自分の答えに辿り着くまで、最後まで隣にいる。

そう決めていた。

そして翌日。

星羅は、自分から遥愛へメッセージを送った。

『はるちゃん、今日会える?』

送信した瞬間。

心臓が大きく跳ねる。

――もう一度、会いたい。

その気持ちが何を意味するのか。

星羅は、確かめに行くことにした。