月影に咲く、一輪の華

翌朝。

星羅は目を覚ました瞬間、昨夜の電話を思い出した。

『俺も、もう我慢しないことにします』

星羅「…………」

布団の中で顔を覆う。

星羅「……はるちゃん……」

思い出すだけで、胸がきゅっとなる。

今までだって、はるちゃんといるのは楽しかった。

でも昨日から――少し違う。

会いたい。

声を聞きたい。

もっと自分を見てほしい。

そんな気持ちが、はっきりしてきていた。

星夜「姉ちゃん?」

星羅「……!」

星夜「起きてる?」

星羅「起きてる!」

慌てて起き上がる。

星夜「顔赤くない?」

星羅「……暑いから!」

星夜「朝から?」

星羅「…………」

星夜は少し笑った。

星夜「昨日、はるちゃんと電話してたろ」

星羅「……うん」

星夜「何話した?」

星羅「…………」

星羅は少し迷ってから、星夜を見る。

星羅「……はるちゃんも、私のこと好きなんだって」

星夜「…………」

星羅「ちゃんと好きになってもらえるようにするって」

星夜「……そっか」

星羅「うん」

星夜はそれ以上聞かなかった。

ただ、星羅の頭をぽんと撫でる。

星夜「じゃあ、もう答えは近いんじゃない?」

星羅「……え?」

星夜「姉ちゃん、昨日からずっと嬉しそうだから」

星羅「…………」

星羅は胸に手を当てる。

確かに。

遥愛から連絡が来るだけで嬉しい。

会いたいと思う。

そして――。

他の誰かといる時とは違う。

星羅「……そうなのかな」

星夜「自分で考えろよ」

星羅「うん……」

その日の午後。

星羅が倉庫でみんなと過ごしていると、夜凪が隣へやって来た。

夜凪「……星羅」

星羅「ん?」

夜凪「今日、少しだけ二人で話せる?」

星羅「うん」

二人で倉庫の外へ出る。

夜凪はしばらく黙っていた。

そして――。

夜凪「……遥愛から連絡来た?」

星羅「……え?」

夜凪「昨日」

星羅「……うん」

夜凪「そっか」

星羅「夜凪……?」

夜凪「俺、分かってる」

星羅「何を?」

夜凪「星羅が、遥愛を特別に思ってること」

星羅「…………」

夜凪は少し寂しそうに笑った。

夜凪「だから、俺もちゃんと言う」

星羅「……うん」

夜凪「俺は星羅が好き」

真っ直ぐな言葉。

星羅の胸が締め付けられる。

夜凪「女が嫌いだった俺が、こんなふうになるなんて思わなかった」

星羅「夜凪……」

夜凪「でも、星羅だけは違った」

一歩近づく。

夜凪「だから、最後まで俺も諦めない」

星羅「…………」

夜凪「遥愛を好きでもいい」

星羅「……え?」

夜凪「それでも俺は、星羅に俺を選んでもらえるようにする」

夜凪はそう言って――。

星羅の頭を優しく撫でた。

夜凪「……覚えておいて」

星羅「…………うん」

夜凪が離れていく。

その背中を見つめながら、星羅は胸を押さえた。

――苦しい。

嬉しいのに。

切ない。

そして、今まで以上に分かった。

自分はもう、誰の気持ちも「仲間だから」で片付けられなくなっている。

特に――。

遥愛のことを考えた時だけ。

胸の奥が、明らかに違う音を立てていた。