月影に咲く、一輪の華



みんなから気持ちを伝えられてから――。

星羅は、ずっと一人で考えていた。

今まで、みんなのことは大切な仲間だと思っていた。

一緒に笑って、喧嘩して、くだらないことで騒いで。

だから、みんなが自分を大切にしてくれることも知っていた。

でも――。

それが「仲間として」じゃなくて。

恋愛として好きだったなんて。

そんなこと、考えたこともなかった。

星羅「…………」

ベッドに寝転びながら、スマホを握る。

豹牙。

來夢。

朔夜。

黒羽。

夜凪。

そして――星夜。

みんなの言葉が頭の中をぐるぐる回る。

星羅「……どうしよう」

誰かを選ぶなんて、簡単にできない。

みんな大切だから。

でも、このまま曖昧にしておくのも嫌だった。

星羅「…………」

しばらく悩んだあと。

星羅は一人の名前をタップした。

『はるちゃん』

星羅「……会いたい」

電話ではなく、直接話したかった。

そして――。

星羅は朱雀の倉庫へ向かった。

扉を開ける。

星羅「はるちゃん……いる?」

遥愛「……星羅さん?」

遥愛が驚いたように振り返る。

星羅「ちょっと……相談したいことがあるの」

遥愛「はい。どうしました?」

二人で少し離れた場所に座る。

星羅はなかなか話し出せず、膝の上で手をぎゅっと握った。

遥愛「……何かありました?」

星羅「うん」

そして、ゆっくり顔を上げる。

星羅「みんなに、告白された」

遥愛「…………」

遥愛の表情が止まった。

星羅「私、みんなのこと仲間だと思ってたから……」

遥愛「……はい」

星羅「恋愛として好きって言われて、初めて知ったの」

遥愛は何も言わずに聞いている。

星羅「みんなのこと大切だから、誰か一人を選ぶなんて……どうしたらいいのか分からなくて」

遥愛「…………」

星羅「私、ちゃんと自分の気持ちを考えたいの」

遥愛「……そうですよね」

星羅「でも、考えても答えが出なくて」

星羅は困ったように笑う。

星羅「だから……はるちゃんに相談したかった」

遥愛「俺に?」

星羅「うん」

遥愛はしばらく黙っていた。

胸の奥が、複雑に痛む。

自分だって――。

星羅が好きだ。

けれど今、星羅は自分ではなく、みんなとの間で悩んでいる。

遥愛「……俺でよければ、いくらでも聞きます」

星羅「ありがとう……」

星羅は少し安心したように笑った。

遥愛「でも」

星羅「?」

遥愛「一つだけ、俺から言わせてください」

星羅「うん」

遥愛は真っ直ぐ星羅を見る。

遥愛「誰を選ぶにしても、星羅さん自身が一番幸せになれる人を選んでください」

星羅「…………」

遥愛「誰かを傷つけたくないからとか、みんなが好きだからとかじゃなくて」

少しだけ息を吸う。

遥愛「星羅さんが、自分から会いたいと思う人」

星羅「…………」

遥愛「一緒にいると、一番安心する人」

そして――。

遥愛「離れたくないと思う人を」

星羅の胸が、どくんと鳴った。

星羅「……うん」

遥愛「それが、答えだと思います」

星羅は黙って遥愛を見つめる。

遥愛「……焦らなくていいですよ」

星羅「はるちゃん……」

遥愛「ちゃんと考えてください」

優しく笑う。

遥愛「俺は待ってますから」

星羅「…………」

その言葉に、星羅の胸がまた大きく揺れた。

そして――。

その夜。

遥愛は朱雀の倉庫で、みんなに今日のことを話した。

紅蓮「……星羅が?」

遥愛「はい」

瑛翔「告白されたって?」

朧「月影のみんなに……?」

遥愛「そうです」

刹那「…………」

倉庫の空気が変わる。

紅蓮は腕を組み、静かに息を吐いた。

紅蓮「……とうとうそこまで来たか」

遥愛「俺も、相談を受けて初めて知りました」

瑛翔「で?」

遥愛「……え?」

瑛翔「お前は何て言ったんだよ」

遥愛「……」

遥愛は少しだけ黙る。

そして――。

遥愛「……自分が一番会いたいと思う人を選べばいいって」

紅蓮「…………」

朧「遥愛らしいね」

遥愛「でも……」

遥愛は拳を軽く握る。

遥愛「俺も、待つつもりです」

紅蓮「……そうか」

その声には、少しだけ笑みが混じっていた。

いよいよ――。

星羅が、自分の気持ちと向き合う時が来た。