月影に咲く、一輪の華


夜凪との約束の日から、少し経った頃。

星羅は以前よりも、夜凪を意識するようになっていた。

星羅「夜凪」

夜凪「ん?」

星羅「こっち来て」

夜凪「……何?」

星羅「隣座ろ」

夜凪「……うん」

以前なら、夜凪が星羅の隣に座るだけで少し驚いていた。

今はもう、それが当たり前になっている。

星羅「ねぇ」

夜凪「何?」

星羅「最近、夜凪といるとなんか落ち着く」

夜凪「…………」

星羅「不思議」

夜凪は少し黙ったあと、星羅の髪に触れる。

夜凪「……俺は、星羅が隣にいると安心する」

星羅「…………」

夜凪「だから」

星羅を見る。

夜凪「これからも、俺の隣にいて」

星羅「……うん」

夜凪「約束」

星羅「約束」

星羅は笑う。

その笑顔を見て、夜凪もほんの少しだけ笑った。

――その様子を、少し離れたところから見ていた豹牙。

豹牙「……もう待ってられねぇな」

來夢「うん」

朔夜「みんな、本気になってきたね」

黒羽「…………」

星夜「姉ちゃん、まだ何も気づいてないけどな」

そして、その日の夜。

豹牙が星羅を呼び止める。

豹牙「星羅」

星羅「ん?」

豹牙「俺、お前のこと好きだ」

星羅「…………え?」

あまりにも真っ直ぐで、星羅が固まる。

豹牙「今までみたいに、兄貴分とか仲間としてじゃなく」

豹牙「一人の女として好き」

星羅「豹牙……」

豹牙「返事は今じゃなくていい」

そう言って、いつものように頭をぽんと撫でる。

豹牙「ただ、俺も本気だって覚えとけ」

星羅「…………うん」

その翌日。

來夢も。

朔夜も。

黒羽も。

それぞれのやり方で、星羅へ気持ちを伝えた。

來夢「俺、星羅ちゃんの笑顔が好き。もっと俺の隣で見せてほしい」

朔夜「……ずっと一緒にいたいって思ってる」

黒羽「俺は、星羅を特別にしたい」

星羅「…………」

一人ずつ告げられるたびに、星羅の胸は大きく揺れた。

みんな、大切。

みんなといる時間が好き。

だからこそ――。

誰か一人を選ぶなんて、今まで考えたこともなかった。

そして最後に。

星夜が星羅の前に立つ。

星羅「星夜?」

星夜「……俺も言っとく」

星羅「?」

星夜「俺は姉ちゃんが一番大事」

星羅「……うん」

星夜「でも、姉ちゃんを好きになる奴が現れたら……俺だって複雑だからな」

星羅「…………」

星夜は少し笑う。

星夜「ただ、姉ちゃんが幸せなら、それでいい」

星羅「星夜……」

ぎゅっ。

星羅が星夜に抱きつく。

星羅「大好き」

星夜「……はいはい」

そんな二人を見ながら――。

夜凪は黙っていた。

自分も。

豹牙も。

來夢も。

朔夜も。

黒羽も。

そして、遥愛も。

もう誰一人として、星羅を「ただの仲間」とは思っていない。

夏休みの終わりが近づく中。

星羅の周りには、いくつもの恋が生まれていた。

そして――。

その中でも一番大きく揺れ始めていたのは。

星羅自身の心だった。