月影に咲く、一輪の華

その時だった。

ドンッ――!!

朱雀の倉庫の扉が、勢いよく開いた。

紅蓮「……っ?」

瑛翔「何だ?」

昼間、星羅に倒された男たちが、仲間を引き連れて立っていた。

男「昼間はよくもやってくれたな」

男「朱雀の奴ら、まとめて相手してやるよ」

一気に倉庫の空気が張り詰める。

遥愛「…………」

立ち上がろうとした、その瞬間。

星羅「……っ」

星羅が遥愛の前へ出た。

そして――。

遥愛の身体を、自分の背中へ隠す。

星羅「……下がって」

遥愛「星羅さん」

星羅「私の後ろにいて」

遥愛「でも……」

遥愛が一歩前へ出ようとする。

遥愛「俺も朱雀のメンバーです。喧嘩できます」

星羅「…………」

星羅が振り返る。

その顔は、今まで遥愛が見たことのないものだった。

笑っていない。

甘えてもいない。

ただ真剣で――少し怖いくらいに真っ直ぐだった。

星羅「……遥愛」

遥愛「……!」

いつもなら――。

「はるちゃん」

そう呼ぶ。

けれど今は違った。

星羅「遥愛は、私の後ろにいて」

遥愛「…………」

星羅「絶対に出てこないで」

遥愛「でも……」

星羅「お願い」

その一言に、遥愛が黙る。

星羅は再び男たちへ向き直った。

その背中は小さい。

けれど――。

遥愛には、今までで一番大きく見えた。

星羅「……この人には、もう触らせない」

男「またお前かよ!」

星羅「…………」

拳を握る。

星羅「昼間も言ったよね」

ゆっくり顔を上げる。

星羅「私の大事な人に、何してるのって」

男「女一人で何ができる!」

星羅「……やってみれば?」

空気が凍る。

紅蓮「……星羅」

星羅「大丈夫」

星羅は振り返らない。

ただ遥愛を背中に庇ったまま、静かに言う。

星羅「今回は絶対に、私の後ろから出ないでね」

遥愛「…………」

星羅「約束」

遥愛は星羅の背中を見つめる。

そして――。

小さく頷いた。

遥愛「……分かりました」

星羅「うん」

その返事を聞いた星羅の表情が、ほんの少しだけ柔らかくなる。

そして次の瞬間――。

再び男たちへ視線を戻した。

星羅「……じゃあ」

静かな声。

星羅「まとめて来て」

その瞬間、朱雀の倉庫に殺気が走った。