月影に咲く、一輪の華

展望エリアへ向かう途中も、星羅は遥愛の手を握ったままだった。

星羅「ねぇ、はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「今日、何が一番楽しかった?」

遥愛「……一番ですか?」

星羅「うん」

遥愛は少し考える。

遥愛「……全部です」

星羅「全部?」

遥愛「はい。海も、夏祭りも、今日も」

星羅「ふふっ」

星羅は嬉しそうに笑う。

星羅「私も全部楽しい」

遥愛「…………」

星羅「でもね」

星羅が少しだけ遥愛へ近づく。

星羅「一番は、はるちゃんと一緒にいられること」

遥愛「……星羅さん」

星羅「ん?」

遥愛「それ、反則ですよ」

星羅「あははっ」

遥愛は照れたように笑いながら、繋いだ手を少し強く握った。

やがて、展望エリアへ到着する。

そこからは遊園地全体が見渡せた。

星羅「わぁ……!」

夕暮れの空の下、園内の建物やアトラクションが小さく見える。

星羅「綺麗……」

遥愛「ですね」

星羅は柵の前まで歩いていき、景色を眺める。

その横顔を、遥愛はじっと見つめていた。

星羅「……?」

星羅が振り返る。

星羅「また見てた?」

遥愛「……はい」

星羅「ふふっ」

遥愛「すみません」

星羅「謝らなくていいよ」

星羅は少し照れたように笑う。

星羅「今日、いっぱい写真撮ったけど……」

遥愛「はい」

星羅「最後に一枚だけ、二人で撮ろう?」

遥愛「もちろん」

星羅がスマホを構える。

二人で並ぶ。

星羅「もっと近く!」

遥愛「これくらい?」

星羅「もうちょっと!」

肩が触れ合う。

星羅「はい、笑って!」

遥愛「ふふっ」

パシャッ。

星羅「……できた!」

画面を見ると、夕暮れの景色を背景に二人が並んで笑っている。

星羅「これ、今日一番好きかも」

遥愛「俺も好きです」

星羅「じゃあ送って♡」

遥愛「はい」

遥愛のスマホにも同じ写真が届く。

星羅「今日、本当にありがとう」

遥愛「こちらこそ」

星羅「はるちゃんと来れてよかった」

遥愛「……俺も」

少しだけ静かな時間が流れる。

星羅「また来たいね」

遥愛「はい」

星羅「今度はみんなでも来たいけど……」

星羅は少しだけ笑う。

星羅「また二人でも来たい」

遥愛「…………」

遥愛は一瞬驚いたように星羅を見る。

でも、すぐに優しく笑った。

遥愛「……ぜひ」

星羅「約束ね♡」

遥愛「約束です」

二人は小指を絡める。

夕焼けに照らされた二人の影が、地面に長く伸びていた。

そして――。

遊園地で過ごす二人の時間は、少しずつ終わりへ近づいていた。