月影に咲く、一輪の華

お化け屋敷の奥へ進むにつれて、遥愛の手はどんどん強く星羅の手を握るようになっていた。

星羅「……はるちゃん」

遥愛「はい……」

星羅「大丈夫?」

遥愛「……大丈夫です」

星羅「絶対大丈夫じゃないでしょ」

遥愛「…………」

星羅がくすっと笑う。

それでも手を離すことはしなかった。

むしろ、星羅の方からぎゅっと握り返す。

星羅「ほら。私がいるから」

遥愛「……ありがとうございます」

星羅「怖かったら、もっとくっついていいよ?」

遥愛「…………」

遥愛は少しだけ迷ったあと、また星羅の腕へそっと寄る。

星羅「ふふっ」

遥愛「……笑わないでください」

星羅「ごめん。でも可愛いなって」

遥愛「…………」

また顔が赤くなる。

そして二人が次の角を曲がった瞬間――。

バンッ!!

遥愛「っ……!」

遥愛が反射的に星羅へ抱きつく。

今度はさっきよりも強く。

星羅「…………!」

遥愛「…………」

しばらく、そのまま動かない。

星羅「……はるちゃん?」

遥愛「……はい」

星羅「もう行ったよ?」

遥愛「…………」

遥愛は恐る恐る顔を上げる。

星羅「ふふっ」

遥愛「……すみません」

星羅「謝らなくていいよ」

星羅は笑いながら、遥愛の頭を優しく撫でる。

星羅「よしよし」

遥愛「…………」

星羅「怖かったねぇ」

遥愛「……子ども扱いしないでください」

星羅「あははっ」

遥愛は恥ずかしそうにしながらも、まだ星羅の腕から離れない。

星羅「……ねぇ」

遥愛「はい?」

星羅「このまま行く?」

遥愛「……はい」

星羅「じゃあ、ずっと手繋いでるね」

遥愛「……お願いします」

星羅「任せて♡」

二人は再び歩き出す。

星羅が前を歩き、遥愛がそのすぐ隣。

何か出てくるたびに星羅が先に確認して、遥愛が怖がるたびに笑いながら手を握ってあげる。

そして――。

ようやく出口が見えてきた。

星羅「出口!」

遥愛「……やっと」

外へ出た瞬間、遥愛が大きく息を吐く。

星羅「あははっ!」

遥愛「……そんなに笑わないでください」

星羅「だって、はるちゃんずっと私にくっついてたもん」

遥愛「…………」

星羅「でも、ちょっと嬉しかった」

遥愛「……え?」

星羅「頼ってくれたみたいで」

遥愛「…………」

星羅はにこっと笑う。

星羅「また怖くなったら、いつでもくっついていいからね♡」

遥愛「……ありがとうございます」

そして二人は顔を見合わせて笑った。

星羅「じゃあ次、何する?」

遥愛「……もう少し平和なところがいいです」

星羅「じゃあ、メリーゴーランド!」

遥愛「それなら大丈夫そうですね」

星羅「決まり!」

二人はまた手を繋いで歩き出す。

今度は遥愛の方から、自然に星羅の手を握っていた。