月影に咲く、一輪の華

ジェットコースターを降りた二人は――。

星羅「…………」

遥愛「…………」

しばらく、二人とも動かなかった。

星羅「……はるちゃん」

遥愛「はい……」

星羅「……怖かった」

遥愛「俺もです」

星羅「さっき大丈夫って言ったじゃん!」

遥愛「星羅さんも『大丈夫』って言ってたじゃないですか」

星羅「……それはそう」

二人で顔を見合わせる。

そして――。

星羅「あはははっ!」

遥愛「ふふっ」

二人とも堪えきれずに笑い出した。

星羅「はるちゃん、めっちゃ叫んでた!」

遥愛「星羅さんもです」

星羅「私は可愛い悲鳴だったもん!」

遥愛「……どうでしょう」

星羅「ひどい!」

笑いながら、星羅は遥愛の腕を掴む。

星羅「でも楽しかった!」

遥愛「俺もです」

星羅「次何乗る?」

遥愛「……少し休みません?」

星羅「えー」

遥愛「さすがに一個目からあれは疲れます」

星羅「じゃあ何か食べよ!」

遥愛「それなら賛成です」

二人は並んで歩き出す。

星羅「何食べようかなぁ」

遥愛「さっきから食べることばっかりですね」

星羅「遊園地って食べるところでしょ?」

遥愛「違いますよ」

星羅「あははっ!」

屋台を見つけるたびに星羅が立ち止まり、遥愛へ「これ食べたい」と嬉しそうに話す。

結局、二人でチュロスを買うことになった。

星羅「半分こしよ」

遥愛「いいですよ」

星羅「はい」

遥愛「……ありがとう」

一本のチュロスを二人で分けながら歩く。

星羅「ねぇ、次あれ乗ろう!」

遥愛「何ですか?」

星羅「観覧車!」

遥愛「いいですね」

星羅「ゆっくりできそう」

遥愛「じゃあ行きましょう」

星羅「うん!」

観覧車へ向かう途中、星羅はふと足を止める。

星羅「……ねぇ、はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「今日、写真いっぱい撮っていい?」

遥愛「もちろん」

星羅「やったぁ!」

星羅はすぐにスマホを取り出す。

パシャッ。

遥愛「……もう撮ってるんですか?」

星羅「うん!」

遥愛「まだ何もしてないですよ」

星羅「いいの。歩いてるはるちゃんも可愛いから」

遥愛「…………」

また顔が赤くなる遥愛。

星羅はそれを見て、楽しそうに笑う。

星羅「ふふっ。やっぱり照れるんだ」

遥愛「……星羅さんがそういうこと言うからです」

星羅「じゃあ、もっと言おうかな」

遥愛「…………」

星羅「あははっ!」

そして二人は観覧車へ。

ゴンドラに乗り込むと、扉が閉まる。

ゆっくりと上へ進んでいく。

星羅「わぁ……!」

遥愛「綺麗ですね」

眼下に広がる遊園地。

遠くには海も見える。

星羅「今日、すごく楽しい」

遥愛「俺もです」

星羅「はるちゃんと来れてよかった♡」

遥愛「…………」

遥愛は少しだけ笑う。

遥愛「……俺も、星羅さんと来られてよかったです」

星羅「ふふっ」

二人きりのゴンドラの中。

星羅は嬉しそうに外を眺める。

その横顔を見ながら、遥愛は静かに思った。

――この時間が、ずっと続けばいいのに。

そして観覧車は、二人を乗せたままゆっくりと空へ上がっていった。