月影に咲く、一輪の華

施設を出る頃には、星羅はすっかりご機嫌だった。

星羅「楽しかったぁ!」

遥愛「よかったです」

星羅「はるちゃん、こういうところ知ってたんだね」

遥愛「前にたまたま見つけて。星羅さんが好きそうだなと思って」

星羅「……私が?」

遥愛「はい」

星羅「私が好きそうだから、連れてきてくれたの?」

遥愛「……そうです」

星羅は一瞬、目を丸くする。

それから、ふわっと笑った。

星羅「……嬉しい」

遥愛「…………」

星羅「私のこと考えてくれてたんだね」

遥愛「まあ……」

星羅「ふふっ」

星羅は嬉しそうに遥愛の腕へ自分の腕を絡める。

星羅「はるちゃん、大好き♡」

遥愛「…………っ」

まただ。

さらっと言われるたびに、遥愛はどう反応していいのか分からなくなる。

遥愛「……星羅さん」

星羅「ん?」

遥愛「そういうこと、普通に言うんですね」

星羅「だって嬉しいんだもん」

遥愛「…………」

星羅「嫌?」

遥愛「……嫌じゃないです」

星羅「じゃあいいね!」

遥愛「……はい」

二人はそのまま遊園地へ向かう。

そして――。

遊園地の入口が見えた瞬間。

星羅「わぁぁぁ!」

星羅の目が一気に輝いた。

遥愛「楽しそうですね」

星羅「だって遊園地だよ!?」

遥愛「分かってます」

星羅「何から乗る?」

遥愛「まずは……」

遥愛が園内マップを見る。

星羅「絶叫系!」

遥愛「いきなりですか?」

星羅「うん!」

遥愛「本当に大丈夫?」

星羅「大丈夫!」

遥愛「……たぶん、じゃなくて?」

星羅「…………」

遥愛「やっぱり」

星羅「あははっ!」

星羅は笑いながら、遥愛の手を握った。

星羅「でも、はるちゃんと一緒なら大丈夫!」

遥愛「…………」

星羅「行こう?」

遥愛「……はい」

手を繋いだまま、二人で園内へ入っていく。

最初に向かったのは、巨大なジェットコースター。

星羅「これ乗ろう!」

遥愛「本当に乗るんですね」

星羅「もちろん!」

遥愛「怖くなったら言ってください」

星羅「はるちゃんこそ!」

遥愛「俺は大丈夫です」

星羅「じゃあ勝負!」

遥愛「勝負?」

星羅「どっちが最後まで平気か!」

遥愛「……分かりました」

そして二人は列に並ぶ。

星羅はわくわくしながらコースターを見上げる。

星羅「楽しみ!」

遥愛「……星羅さん」

星羅「ん?」

遥愛「手、握っててもいいですか?」

星羅「…………」

星羅が少しだけ目を丸くする。

遥愛「怖いわけじゃないですけど……」

星羅「ふふっ」

星羅は嬉しそうに手を握り直した。

星羅「もちろん♡」

そして――。

二人を乗せたコースターが、ゆっくりと上へ上がっていく。

カタ、カタ、カタ……。

星羅「…………」

遥愛「…………」

さっきまで余裕だった二人の顔が、少しずつ引きつっていく。

星羅「……はるちゃん」

遥愛「はい」

星羅「……これ」

遥愛「はい」

星羅「……思ったより高くない?」

遥愛「…………そうですね」

そして頂上へ。

星羅「…………」

遥愛「…………」

次の瞬間――。

急降下。

星羅「きゃぁぁぁぁっ!」

遥愛「うわぁぁぁっ!」

二人の悲鳴が、遊園地中に響き渡った。