月影に咲く、一輪の華

朧「じゃあ、ちょっと待ってて」

星羅「うん!」

朧がキッチンへ向かう。

その背中を見送った星羅は、当然のように遥愛の隣へぴったり座った。

星羅「はるちゃん、今日何してたの?」

遥愛「特に何も。みんなと話したりしてました」

星羅「そっかぁ」

星羅は嬉しそうに遥愛の顔を覗き込む。

星羅「私が突然来て嬉しかった?」

遥愛「……はい」

星羅「ほんと?」

遥愛「本当です」

星羅「ふふっ。よかった♡」

遥愛は少し照れたように笑う。

そんな二人を見ていた瑛翔が、思わず口を挟んだ。

瑛翔「……なぁ星羅ちゃん」

星羅「ん?」

瑛翔「今日、俺たちにも会いに来てくれたんだよな?」

星羅「もちろん!」

瑛翔「……なら、もうちょっとこっちにも来てよ」

星羅「え?」

瑛翔「ずっと遥愛の隣じゃん」

星羅「だって、はるちゃんに会いに来たんだもん」

瑛翔「…………」

紅蓮「はっきり言われたな」

瑛翔「分かってたけど……!」

刹那「…………」

瑛翔がしょんぼりする横で、星羅は首を傾げる。

星羅「でも、みんなにも会いたかったよ?」

瑛翔「……ほんと?」

星羅「うん!」

瑛翔「じゃあ――」

星羅「でも、はるちゃんにも会いたかった!」

瑛翔「…………」

紅蓮「追い打ちやめてやれ」

星羅「あははっ!」

朧「できたよ」

その声に、星羅が勢いよく振り向く。

星羅「パンケーキ!」

朧が皿を持って戻ってくる。

ふわふわのパンケーキに、生クリームとフルーツが添えられている。

星羅「わぁぁ……!」

朧「前に食べたいって言ってたから」

星羅「覚えててくれたの!?」

朧「もちろん」

星羅「朧大好き!」

星羅が嬉しそうに笑う。

朧も思わず笑った。

星羅はパンケーキの前に座ると、目を輝かせる。

星羅「いただきます!」

一口食べる。

星羅「…………!」

朧「どう?」

星羅「おいしい……!」

星羅は幸せそうに頬を緩める。

星羅「やっぱり朧のパンケーキ好き!」

朧「よかった」

星羅「また食べたい!」

朧「いつでも作るよ」

星羅「ほんと!?」

朧「うん」

星羅「じゃあまた来る!」

その言葉に、朱雀のメンバーが一斉に反応する。

紅蓮「……また来る?」

瑛翔「それって、また急に来るってこと?」

星羅「うん!」

刹那「…………」

星羅「だってパンケーキ食べたい時あるもん」

朧「作っておく」

星羅「やったぁ!」

遥愛はそんな星羅を見ながら、静かに笑っていた。

遥愛「……星羅さん、本当に朧さんのパンケーキ好きなんですね」

星羅「うん!」

星羅は嬉しそうに頷く。

星羅「だから朱雀に来る理由がまた増えた!」

その言葉に、朱雀の空気が少しだけ明るくなる。

……けれど。

瑛翔「…………」

紅蓮「…………」

刹那「…………」

三人はちらりと遥愛を見る。

星羅が朱雀へ来る理由は増えた。

けれど、その理由の中でも――。

一番大きそうなのが遥愛なのが、やっぱり複雑だった。