月影に咲く、一輪の華

朱雀の倉庫へ向かう道中。

星羅は、ずっと楽しそうに笑っていた。

星夜「そんなに楽しみ?」

星羅「うん!」

星夜「遥愛を驚かせるのが?」

星羅「それもある!」

星羅は胸の前で両手を握る。

星羅「はるちゃん、私が今日来るなんて絶対思ってないでしょ?」

星夜「昨日遊園地の約束したばっかりだしな」

星羅「だから突然行ったら、びっくりするかなって」

星夜「……姉ちゃん、そういうの好きだよな」

星羅「だって、びっくりした顔って可愛いじゃん」

星夜「なるほど」

しばらく歩いていると、遠くに朱雀の倉庫が見えてくる。

星羅「……あ!」

星夜「ん?」

星羅「見えてきた!」

星羅の足取りが一気に速くなる。

星夜「ちょ、走るなって」

星羅「早く会いたい!」

星夜「……はいはい」

星羅は倉庫の扉の前まで来ると、一度立ち止まった。

星夜「どうした?」

星羅「……しーっ」

星夜「?」

星羅は口元に人差し指を当てる。

星羅「静かに入ろう」

星夜「サプライズだから?」

星羅「うん!」

星夜は呆れながらも、声を抑える。

二人でそっと扉を開ける。

中では朱雀のメンバーが、それぞれいつものように過ごしていた。

紅蓮「……ん?」

瑛翔「誰か来た?」

刹那「…………」

朧「…………?」

星羅は扉の陰から顔だけを覗かせる。

星羅「…………」

誰にもまだ気づかれていない。

そして――。

星羅は遥愛の姿を見つけた。

遥愛は少し離れた場所でスマホを見ている。

星羅「……ふふっ」

星夜「行ってこい」

星羅「うん!」

星羅はそっと歩き出す。

遥愛の背後まで近づいて――。

星羅「はるちゃん!」

遥愛「……っ!?」

遥愛が勢いよく振り返る。

目を見開いた。

遥愛「……星羅さん!?」

星羅「えへへ!」

遥愛「どうして……?」

星羅「遊びに来た!」

遥愛「…………」

遥愛はしばらく固まっていた。

星羅「びっくりした?」

遥愛「……はい」

星羅「やったぁ!」

嬉しそうに笑う星羅。

その声を聞いて、朱雀のメンバーもようやく状況を理解する。

瑛翔「……え?」

紅蓮「星羅?」

刹那「…………」

朧「…………!」

朧の顔が少し明るくなる。

星羅「みんなー!」

紅蓮「どうしたんだ?」

星羅「今日は予定なかったから、遊びに来ちゃった!」

瑛翔「いきなり!?」

星羅「うん!」

そして星羅は、もう一度遥愛を見る。

星羅「はるちゃんにも会いたかったし」

遥愛「…………」

遥愛の顔が、少しだけ嬉しそうに緩む。

星羅「それとね!」

朧の方を見る。

星羅「朧!」

朧「ん?」

星羅「……パンケーキ食べたい!」

朧「…………」

一瞬、目を丸くして――。

朧「……分かった」

星羅「やったぁ!」

星羅が嬉しそうに笑う。

瑛翔「……来た理由、それもだったのかよ」

紅蓮「星羅らしいな」

刹那「…………」

そして星羅は、当然のように遥愛の隣へ座った。

星羅「今日はいっぱい遊ぼうね、はるちゃん」

遥愛「はい」

星羅「ふふっ」

その光景を見た朱雀のメンバーは――。

またしても、複雑な顔をすることになった。