月影に咲く、一輪の華

その日の夜。

星羅「ねぇ、みんな」

ソファーに座りながら、星羅が月影のメンバーを見回す。

豹牙「ん?」

星羅「夏休み、ほんとにみんなでいっぱい遊ぼうね」

來夢「もちろん」

朔夜「楽しみにしてる」

黒羽「……ああ」

夜凪「うん」

星羅「よかったぁ」

星羅は嬉しそうに笑って、ソファーへごろんと横になる。

星羅「でも、二人で遊ぶのもしたいなぁ」

その言葉に、全員の動きが止まる。

豹牙「……二人で?」

星羅「うん!」

來夢「……誰と?」

星羅「え?」

星羅はきょとんとする。

星羅「みんなと一人ずつ!」

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

思わず顔を見合わせる。

星羅「だって、まだ二人で遊んだことない人もいるでしょ?」

豹牙「……いるな」

星羅「だから、みんなともデートしたい!」

豹牙「……!」

來夢「それ、俺たちも誘っていいってこと?」

星羅「もちろん!」

一気に空気が変わった。

豹牙「……じゃあ」

豹牙が少しだけ身を乗り出す。

豹牙「俺、星羅と焼肉行きたい」

星羅「いいね!」

豹牙「そのあと夜景」

星羅「夜景もいい!」

豹牙「……決まりな」

星羅「うん!」

來夢「じゃあ俺はカフェとか行きたい」

星羅「行こう!」

朔夜「俺は……映画」

星羅「映画も行こう!」

黒羽「……俺は買い物」

星羅「いいよ!」

そして、最後に夜凪。

夜凪「……俺は」

少し考えてから、星羅を見る。

夜凪「静かなところに行きたい」

星羅「静かなところ?」

夜凪「人が少ない場所で、ゆっくり話したい」

星羅「うん!」

星羅は迷いなく頷く。

星羅「夜凪ともデートしよう」

夜凪「……ああ」

その瞬間、星羅が嬉しそうに笑った。

星羅「楽しみだなぁ」

豹牙「……姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「その『デート』って言い方、ちょっと気をつけた方がいいんじゃない?」

星羅「なんで?」

星夜「……なんでもない」

星羅「変なの」

星羅は笑いながら、またスマホを手に取る。

星羅「じゃあ、順番決めよ!」

豹牙「もう決めるのかよ」

星羅「夏休み短いんだもん!」

來夢「確かに」

朔夜「早い者勝ちになりそうだな」

黒羽「…………」

夜凪「……じゃあ」

夜凪が小さく笑う。

夜凪「誰が一番先に誘えるかだな」

豹牙「負けねぇ」

來夢「俺も」

朔夜「俺も」

黒羽「……ああ」

星羅「ふふっ」

星羅はそんなみんなを見ながら、嬉しそうに笑った。

自分と遊びたいと思ってくれる人が、こんなにいる。

それがただ嬉しくて仕方なかった。

――けれど。

その頃、朱雀の倉庫でも。

瑛翔「……俺、明日誘う」

紅蓮「俺も」

朧「……俺も」

刹那「…………」

遥愛「……」

こちらでも、それぞれが星羅との予定を考えていた。

夏休みはまだ始まったばかり。

星羅を巡る予定争奪戦は、月影だけでは終わりそうになかった。