月影に咲く、一輪の華

紅蓮「じゃあ、具体的にどうするか決めるぞ」

豹牙「……作戦会議ってこと?」

紅蓮「そういうことだ」

星夜「姉ちゃん本人が知らないところで何やってんだよ……」

瑛翔「だってこのままだと遥愛に全部持ってかれるじゃん」

遥愛「……全部って」

瑛翔「海も行った。夏祭りも行った。浴衣も着た。写真も撮った。頬にキスまでされた」

遥愛「…………」

瑛翔「次は遊園地だろ?」

遥愛「……はい」

瑛翔「ほら!」

瑛翔が悔しそうに机を叩く。

瑛翔「俺、星羅ちゃんと二人で出かけたことないんだけど!」

豹牙「俺もだ」

來夢「俺も」

朔夜「……俺も」

黒羽「…………」

夜凪「俺もない」

朧「……俺も」

刹那「…………」

刹那も静かに頷く。

星夜「俺は昨日出かけたけど」

瑛翔「お前は弟だから別枠!」

星夜「何でだよ」

瑛翔「だって姉弟じゃん!」

星夜「…………」

少し考えて。

星夜「まぁ、確かに」

豹牙「じゃあまず、一人ずつ星羅を誘う」

紅蓮「それが一番だな」

來夢「でも星羅ちゃん、今遥愛の予定待ちなんだよね?」

遥愛「はい。次は遊園地に行こうって約束しました」

全員「…………」

また空気が重くなる。

豹牙「……遊園地」

瑛翔「しかも次の予定まで決まってる」

刹那「…………」

朧「……強いね」

遥愛「すみません……」

紅蓮「だから謝るなって」

紅蓮は頭を掻きながらため息をつく。

紅蓮「とりあえず、遥愛の遊園地が終わるまで何もしないってのも違うだろ」

豹牙「だな」

夜凪「……俺は」

全員が夜凪を見る。

夜凪「星羅と二人で、どこか静かなところに行きたい」

豹牙「へぇ」

夜凪「人が多い場所より、ゆっくり話せるところがいい」

星夜「姉ちゃん、そういうの好きだと思う」

夜凪「……そうか」

少しだけ嬉しそうにする。

朧「俺は……」

朧が考える。

朧「またパンケーキ作ってあげたい」

星羅が初めて朱雀へ来た時。

真っ先に朧のところへ走ってきて、抱きついて。

『朧のパンケーキ食べたい』

そう甘えた。

朧「……あの顔、また見たいから」

瑛翔「それは強いな」

豹牙「確かに」

來夢「星羅ちゃん、朧のパンケーキ大好きだもんね」

朧「うん」

刹那「…………」

刹那は少し考えてから口を開く。

刹那「俺は……」

そこで止まる。

瑛翔「何?」

刹那「……まだ考える」

瑛翔「珍しいな」

刹那「…………」

昨日、映画を見ていた時。

怖さに耐えきれず、星羅の腕にくっついた。

そしてそのまま――。

星羅が自分にもたれかかって眠った。

刹那「…………」

あの時の重みを思い出して、刹那の耳が少し赤くなる。

瑛翔「……何か思い出してる?」

刹那「何でもない」

瑛翔「怪しい」

そんなやり取りを横で聞いていた星夜が、ふと笑った。

星夜「みんな、姉ちゃんのこと好きだな」

全員「…………」

一瞬、誰も否定しなかった。

その沈黙が、何よりの答えだった。

そして――。

誰もまだ知らない。

この緊急会議が終わった直後。

倉庫へ戻った星羅が、何の悪気もなく、

「ねぇみんな、今度一緒に遊びに行こうよ!」

と言い出すことを。

星羅本人だけは、誰か一人を選ぶつもりなどなく。

ただ純粋に、みんなと過ごす夏休みを楽しみにしていた。