月影に咲く、一輪の華

星羅「……?」

倉庫の中に入ってからも、みんなが妙に静かなことに気づいて、星羅は不思議そうに辺りを見回した。

星羅「どうしたの?」

豹牙「……別に」

星羅「何かあった?」

來夢「何もないよ」

星羅「……?」

明らかに何かある。

けれど星羅は深く考えず、そのままソファーへ向かった。

星羅「今日、ほんっと楽しかったぁ」

星夜「……だろうな」

星羅「海行って、夏祭り行って……」

星夜「遊園地の約束までして」

星羅「えへへ」

星羅は嬉しそうに笑う。

その顔を見て、朔夜がぽつりと呟いた。

朔夜「……楽しかったならよかった」

星羅「うん!」

星羅は満面の笑みで頷く。

すると、豹牙が腕を組んだまま星羅を見る。

豹牙「星羅」

星羅「ん?」

豹牙「……遥愛と、そんなに楽しかったか?」

星羅「うん!」

即答。

豹牙「…………」

星羅「すっごく楽しかったよ!」

來夢「そっか」

星羅「はるちゃん、優しいし、一緒にいると楽しいし」

朔夜「……うん」

星羅「海も夏祭りも一緒に行けたし、今度は遊園地!」

星羅は指を折りながら嬉しそうに話していく。

星羅「あとね、今日撮ってくれた写真もすっごく好きなの!」

黒羽「…………」

星羅「私が気づいてない時の写真いっぱい撮ってくれてて」

星羅はスマホを取り出す。

星羅「ほら!」

みんなが覗き込む。

そこには、夏祭りの屋台を見て笑っている星羅。

りんご飴を持って嬉しそうにしている星羅。

浴衣姿で振り返って笑っている星羅。

どれも自然な表情だった。

星羅「これ、すごく好き」

夜凪「…………」

星羅「はるちゃん、写真撮るの上手だよね」

豹牙「……そうだな」

星羅「私もいっぱい撮ったんだよ!」

星羅が今度は遥愛の写真を見せる。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星羅「これとか、めっちゃかっこよくない?」

星夜「……確かに」

星羅「でしょ?」

星夜「でも姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「今日、何枚写真撮った?」

星羅「えーっと……」

星羅が数える。

星羅「……分かんない!」

星夜「絶対かなり撮っただろ」

星羅「あははっ」

そして、星羅はふとスマホを眺める。

星羅「……あ」

星夜「どうした?」

星羅「はるちゃんから写真送ってもらった時のメッセージ……」

星羅が少しだけ笑う。

星羅「また見ちゃった」

星夜「…………」

その瞬間、星夜は苦笑する。

星夜「姉ちゃん、本当に好きだな」

星羅「うん!」

迷いのない返事。

それを聞いた月影のメンバーは、また複雑な顔をした。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星羅はそんなことには気づかず、ソファーへごろんと横になる。

星羅「今日は疲れたぁ……」

星夜「そりゃ一日中遊んでたからな」

星羅「でも楽しかった」

星夜「……よかったな」

星羅「うん」

星羅は目を閉じる。

けれど数秒後。

星羅「……ねぇ」

星夜「ん?」

星羅「明日もどこか行こうよ」

星夜「俺と?」

星羅「うん!」

星夜「……いいよ」

星羅「やった!」

その瞬間、後ろから小さなため息がいくつも聞こえた。

豹牙「……また星夜か」

來夢「今日ずっと二人で遊んでたのに」

朔夜「……俺たちもそろそろ本気で誘わないとな」

黒羽「…………」

夜凪「……そうだな」

星羅「?」

星羅は振り返る。

星羅「みんな、なんか今日変じゃない?」

豹牙「……何でもねぇ」

星羅「ふーん?」

首を傾げながらも、星羅はまた笑った。

そしてそのまま、今日撮った写真を眺める。

海。

浴衣。

夏祭り。

遥愛との写真。

そして――次の約束は、遊園地。

星羅の夏休みは、まだ始まったばかりだった。