月影に咲く、一輪の華

夏祭りの会場へ入ると、たくさんの屋台と人で賑わっていた。

星羅「わぁ……!」

遥愛「すごい人ですね」

星羅「はるちゃん、何食べる?」

遥愛「星羅さんは?」

星羅「私は全部!」

遥愛「ふふっ」

二人で屋台を見て回り、焼きそばやたこ焼き、りんご飴まで買っていく。

そして――。

遥愛が焼きそばを食べている姿を見た星羅が、ふとスマホを取り出した。

パシャッ。

遥愛「……?」

星羅「ふふっ」

パシャッ。

遥愛「星羅さん?」

星羅「なに?」

遥愛「今、写真撮りました?」

星羅「うん!」

遥愛「……何で?」

星羅「だって、はるちゃん可愛いから」

遥愛「…………」

星羅は気にすることなく、また遥愛へスマホを向ける。

遥愛が焼きそばを食べているところ。

りんご飴を眺めているところ。

屋台の明かりに照らされた横顔。

笑っているところ。

パシャッ、パシャッ。

遥愛「……結構撮ってません?」

星羅「うん!」

遥愛「何枚くらい?」

星羅「いっぱい♡」

遥愛「…………」

星羅「だって今日のはるちゃん、いつもよりかっこいいんだもん」

遥愛「……それ、反則ですよ」

星羅「何が?」

遥愛「そんなこと言われたら、何も言えないです」

星羅「ふふっ」

また一枚。

遥愛が少し照れながら笑った瞬間だった。

星羅「今のも好き!」

遥愛「……星羅さん」

星羅「ん?」

遥愛「俺も撮ります」

星羅「え?」

遥愛はスマホを取り出した。

星羅「私を?」

遥愛「はい」

星羅「いいよ!」

星羅が笑顔を向ける。

遥愛「…………」

けれど遥愛は、あえてカメラ目線ではなく――。

屋台を眺めながら楽しそうに笑っている星羅。

髪を耳にかける仕草。

りんご飴を嬉しそうに食べている横顔。

ふと振り返った瞬間。

パシャッ。

星羅「……?」

遥愛「お返しです」

星羅「…………」

今度は星羅が固まった。

遥愛「今日の星羅さん、すごく楽しそうだから」

星羅「…………」

遥愛「写真に残しておきたくて」

星羅「……はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「その写真、見せて!」

遥愛「いいですよ」

画面を見た星羅の目が輝く。

星羅「……え、めっちゃいい!」

遥愛「ほんとですか?」

星羅「うん! これ好き!」

遥愛「じゃあ送ります」

星羅「待って!」

星羅は自分のスマホを差し出す。

星羅「これ、私にも送って♡」

遥愛「もちろん」

送られてきた写真を見て、星羅は嬉しそうに微笑む。

星羅「……宝物にする」

遥愛「そんな大げさな」

星羅「大げさじゃないよ」

星羅は写真を眺めながら、小さく笑った。

星羅「はるちゃんが撮ってくれた私だもん」

遥愛「…………」

その言葉に、遥愛も照れたように笑う。

少し離れたところでは――。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

月影と星夜は、完全に二人の世界になっている二人を眺めていた。

豹牙「……あれ」

來夢「うん」

豹牙「もうカップルだろ」

朔夜「……俺もそう思う」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「姉ちゃん、楽しそうだな」

豹牙「そこだけは否定できねぇ」

そして星羅は、遥愛が撮ってくれた写真を何度も眺めながら――。

星羅「はるちゃん、次はどこ行く?」

遥愛「まだ食べます?」

星羅「うん!」

遥愛「じゃあ、次は俺が選びます」

星羅「楽しみ!」

また二人で並んで歩き出す。

その後ろを――。

月影と星夜は、今日もこっそり追いかけていた。