月影に咲く、一輪の華

店の奥から、星羅がゆっくり出てくる。

星羅「はるちゃん、どうかな?」

遥愛「…………」

遥愛の言葉が止まった。

さっきまで海では水着姿だった星羅が、今は淡い色の浴衣に身を包んでいる。

髪も簡単にまとめられていて、いつもの星羅とは少し違って見えた。

遥愛「……すごく、似合ってます」

星羅「ほんと?」

遥愛「はい」

星羅「よかったぁ」

嬉しそうに笑う星羅。

その笑顔を見た遥愛は、少しだけ視線を逸らした。

星羅「はるちゃんも見せて!」

遥愛「……はい」

今度は遥愛が姿を見せる。

星羅「…………」

星羅が目を丸くする。

星羅「かっこいい!」

遥愛「ありがとうございます」

星羅「なんか今日、いつもと違うね」

遥愛「星羅さんもですよ」

星羅「ふふっ」

二人で顔を見合わせて笑う。

そして――。

少し離れた場所で見ていた月影と星夜。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

誰も声を出さない。

星羅が浴衣姿で笑っている。

それだけなのに、海で見た水着姿とはまた違う衝撃だった。

豹牙「……やば」

來夢「……うん」

朔夜「……めちゃくちゃ似合ってる」

黒羽「…………」

夜凪「…………綺麗だな」

星夜「…………」

星夜は少しだけ嬉しそうに笑う。

星夜「姉ちゃん、可愛いな」

豹牙「お前は弟だから余裕あるよな……」

星夜「何で?」

豹牙「……何でもねぇ」

星羅「はるちゃん!」

遥愛「はい?」

星羅「一緒に写真撮ろう!」

遥愛「いいですよ」

星羅がスマホを取り出す。

二人が並ぶ。

星羅「もっと近く!」

遥愛「……これくらい?」

星羅「うん!」

肩が触れ合うくらいまで近づく。

パシャッ。

星羅「見せて!」

遥愛「どうですか?」

星羅「……好き!」

遥愛「写真が?」

星羅「うん!」

遥愛「……よかったです」

星羅「これ、今日の思い出にしようね♡」

遥愛「はい」

その様子を見ながら、月影のメンバーは複雑な気持ちになる。

豹牙「……また写真撮ってる」

來夢「しかも浴衣で」

朔夜「……いいな」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「……姉ちゃん、楽しそう」

豹牙「それは分かる」

來夢「でもさ」

來夢が小さく笑う。

來夢「俺たちも、いつかあんなふうに星羅と写真撮りたいよね」

朔夜「……うん」

黒羽「…………ああ」

夜凪「…………」

夜凪は黙ったまま、二人を見つめる。

その横顔には、ほんの少しだけ寂しさが滲んでいた。

星羅「じゃあ行こう!」

遥愛「はい」

星羅が遥愛の手を取る。

そのまま二人は夏祭りの会場へ向かって歩き出す。

提灯の明かりが、少しずつ二人を照らしていく。

星羅「楽しみだね、はるちゃん♡」

遥愛「……はい」

そしてその後ろを――。

月影と星夜も、一定の距離を保ちながらついていった。

尾行は、まだ終わらない。