月影に咲く、一輪の華


そして――。

少し離れたところでは。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

全員、固まっていた。

豹牙「……おい」

來夢「うん」

豹牙「……浴衣だぞ」

朔夜「……そうだな」

黒羽「…………」

星夜「……姉ちゃん、浴衣着るんだ」

豹牙「海で水着見たばっかりなのに、今度は浴衣かよ……」

夜凪「…………」

誰も帰ろうとは言わなかった。

むしろ――。

全員、さらに真剣に二人を追うことになった。

やがて星羅が一着の浴衣を手に取る。

星羅「これにする!」

遥愛「似合いそうですね」

星羅「はるちゃんは?」

遥愛「俺は……これにします」

星羅「いいじゃん!」

二人はそれぞれ浴衣を選び、店の奥へ入っていく。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

豹牙「……なぁ」

星夜「何?」

豹牙「俺たち、何時間尾行してんだ?」

星夜「知らない」

來夢「でも……」

來夢が夏祭りの会場を見る。

提灯が並び、遠くから祭囃子が聞こえてくる。

來夢「浴衣姿の星羅ちゃん……見たくない?」

豹牙「…………」

朔夜「……見たい」

黒羽「…………俺も」

夜凪「…………」

星夜「……俺も」

結局、誰一人として帰る気にはならなかった。

そして――。

しばらくして店の奥から足音が聞こえてくる。

星羅「はるちゃん、どうかな?」

遥愛「…………」

遥愛が顔を上げる。

その瞬間――。

月影の男たちは、まだ知らなかった。

次に見る星羅の姿が、水着以上に自分たちの心を乱すことを。