月影に咲く、一輪の華

星羅「はるちゃん、こっち!」

遥愛「はい!」

波打ち際では、二人が子どものようにはしゃいでいた。

星羅が手ですくった海水を遥愛にかける。

星羅「えいっ!」

遥愛「わっ!」

星羅「あははっ!」

遥愛「星羅さん、やりましたね」

今度は遥愛が少しだけ水を返す。

星羅「きゃっ!」

遥愛「ふふっ」

星羅「もう一回!」

遥愛「いいんですか?」

星羅「うん!」

二人が笑い合う。

その様子を遠くから見ていた月影と星夜は、何とも言えない顔をしていた。

豹牙「…………」

來夢「……楽しそうだな」

朔夜「うん」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「姉ちゃん、あんなにはしゃぐんだな」

豹牙「お前、知らなかったのか?」

星夜「海なんて一緒に来たことないから」

星羅はまた遥愛の手を引く。

星羅「ねぇ、海の家行こう!」

遥愛「もうですか?」

星羅「お腹空いた!」

遥愛「さっきからずっと泳いでましたからね」

星羅「焼きそば食べたい!」

遥愛「じゃあ行きましょう」

二人が海の家へ向かい始める。

すると――。

豹牙「……俺たちも行くか?」

來夢「尾行なんだから、近づきすぎたらバレるよ」

豹牙「分かってる」

朔夜「でも……」

朔夜が星羅を見る。

星羅「はるちゃん、何食べる?」

遥愛「何でもいいですよ」

星羅「じゃあ半分こしよ!」

遥愛「……いいですね」

朔夜「……あれは見てるだけで腹立つな」

黒羽「同感」

星夜「…………」

星夜は少しだけ笑った。

星夜「姉ちゃん、昔から気に入った人にはああだから」

豹牙「それにしてもだろ」

來夢「うん……」

そんな中、星羅が突然振り返る。

星羅「…………?」

遠くにいる月影と星夜の姿が、一瞬だけ視界に入った気がした。

星羅「んー……?」

遥愛「どうしました?」

星羅「なんか、誰かいる気がする」

遥愛「?」

星羅「……気のせいかな」

遥愛「たぶんそうですよ」

星羅「そっか!」

あっさり前を向く。

物陰では――。

豹牙「…………!」

來夢「危なかった」

朔夜「今、見られたよな?」

黒羽「……たぶん」

夜凪「…………」

星夜「姉ちゃん、意外と気づかないな」

豹牙「よし……もう少し距離取るぞ」

全員が頷く。

一方、海の家に着いた星羅は、メニューを見た瞬間に目を輝かせていた。

星羅「はるちゃん!」

遥愛「はい?」

星羅「全部食べたい!」

遥愛「……全部?」

星羅「焼きそば、たこ焼き、フランクフルト、かき氷!」

遥愛「そんなに食べられます?」

星羅「食べられる!」

遥愛「ふふっ」

遥愛は笑いながら、星羅の好きなものを一つずつ注文していく。

星羅「ありがとう♡」

遥愛「どういたしまして」

そして二人は並んで席に座る。

星羅「いただきます!」

嬉しそうに焼きそばを頬張る星羅。

遥愛「……美味しいですか?」

星羅「うん! はるちゃんも食べる?」

遥愛「じゃあ、一口」

星羅「はい、あーん」

遥愛「…………え」

星羅「どうしたの?」

遥愛「……いや」

星羅「はい、あーん」

遥愛「…………いただきます」

遠くからその光景を見ていた月影と星夜。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

誰も言葉を発しない。

ただ全員、心の中で同じことを思っていた。

――もうあいつら、付き合ってるみたいじゃねぇか。