月影に咲く、一輪の華

海辺に着いてから、しばらく。

星羅「はるちゃん、行こ!」

遥愛「はい」

二人が波打ち際へ向かって走っていく。

その後ろ――。

物陰に隠れるようにしていた月影のメンバーと星夜は、揃って固まっていた。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

誰も、しばらく言葉が出ない。

何故なら――。

星羅の水着姿を、全員が初めて見たから。

星羅「はるちゃん、海冷たいよ!」

遥愛「本当ですね」

星羅「気持ちいいー!」

無邪気に笑いながら海へ入っていく星羅。

豹牙「…………」

豹牙の視線が、思わず星羅へ釘付けになる。

豹牙「……おい」

來夢「ん?」

豹牙「星羅って……」

一度言葉を止める。

豹牙「あんなにスタイルよかったのかよ」

來夢「…………」

來夢も思わず黙る。

朔夜「……俺も知らなかった」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

全員、普段の星羅しか知らなかった。

制服姿や私服姿なら何度も見ている。

けれど、水着になると――。

普段は服に隠れていた女性らしいスタイルがはっきりと分かる。

星羅「はるちゃん、こっち!」

遥愛「今行きます」

星羅が楽しそうに手を振る。

その瞬間。

豹牙「…………」

鼻から、つー……。

來夢「……豹牙」

豹牙「…………」

來夢「鼻血」

豹牙「…………は?」

ぽたっ。

豹牙「…………」

慌てて鼻を押さえる。

星夜「……お前、何やってんの」

豹牙「うるせぇ!」

その横では――。

朔夜「…………」

ぽたっ。

黒羽「……朔夜」

朔夜「…………」

黒羽「お前も」

朔夜「…………」

鼻血。

豹牙「お前もかよ!」

朔夜「……うるさい」

來夢「二人とも分かりやすすぎるって!」

星夜「…………」

星夜は呆れながらも、改めて星羅を見る。

星羅は何も知らず、遥愛と水を掛け合っている。

星羅「えいっ!」

遥愛「わっ!」

星羅「あははっ!」

遥愛「もう……!」

星羅「楽しいね!」

遥愛「はい」

その笑顔を見て、星夜は小さくため息をついた。

星夜「……姉ちゃん、完全に楽しんでるな」

夜凪「…………」

夜凪は黙って二人を見ていた。

星羅は本当に楽しそうだった。

そして――。

夜凪「…………綺麗だな」

ぽつり。

誰にも聞こえないほど小さな声。

けれど、その言葉を聞いた星夜だけが、ちらりと夜凪を見る。

星夜「…………」

何も言わなかった。

一方。

豹牙は鼻を押さえながら、悔しそうに呟く。

豹牙「……あれ、反則だろ」

來夢「何が?」

豹牙「……水着」

瑛翔もいない。

紅蓮もいない。

刹那もいない。

だから誰も茶化す者はいない。

ただ――。

月影と星夜の男たちは、初めて見る星羅の水着姿に完全にやられていた。

そして、その視線の先では。

星羅「はるちゃん、次あっち行こ!」

遥愛「はい!」

星羅はまた遥愛の手を取る。

その瞬間――。

豹牙「…………」

朔夜「…………」

來夢「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜「…………」

全員の胸に、別の意味で同じ感情が湧いた。

……やっぱり遥愛、羨ましい。