月影に咲く、一輪の華

翌日。

星羅は朝からご機嫌だった。

目を覚ましてすぐスマホを確認する。

遥愛から新しいメッセージは――まだない。

星羅「……まだかなぁ」

返事を急かすつもりはない。

昨日、「予定が分かったら連絡します」と言ってくれた。

だから、今は待つだけ。

星羅「ふふっ」

スマホを置くと、今度は昨日星夜と決めた予定を思い出す。

星羅「星夜!」

星夜「……何」

星羅「今日、買い物行こ!」

星夜「今日?」

星羅「うん! 昨日約束したじゃん!」

星夜「ああ……」

まだ眠そうな星夜の腕を、星羅が楽しそうに引っ張る。

星羅「そのあとカフェ!」

星夜「分かってるって」

星羅「夜は焼肉!」

星夜「それも覚えてる」

星羅「じゃあ準備しよ!」

星夜「……姉ちゃん、朝から元気すぎ」

星羅「だって楽しみなんだもん!」

そんな二人を見ながら、月影のメンバーもそれぞれ動き始めていた。

豹牙「…………」

豹牙はスマホを眺めながら、何かを考えている。

來夢「豹牙、どうしたの?」

豹牙「……星羅を誘うなら、どこがいいと思う?」

來夢「え?」

豹牙「二人で出かけるならよ」

來夢「……もう考えてるんだ」

豹牙「当たり前だろ」

朔夜「俺も考えてる」

黒羽「俺も」

夜凪「…………俺も」

來夢「みんな本気だね」

豹牙「遥愛に出遅れたからな」

その言葉に、少しだけ空気が止まる。

昨日の星羅の姿。

遥愛に抱きついて、離れたくないと泣きそうになりながら叫んでいた。

それを思い出すと、やっぱり悔しい。

豹牙「……でも、星羅は俺たちとも遊ぶって言った」

來夢「うん」

朔夜「だったら、焦らずちゃんと二人の時間を作ればいい」

黒羽「…………」

夜凪「そうだな」

その時。

星羅「じゃあ行ってくるねー!」

星羅が玄関へ向かってくる。

星夜「姉ちゃん、財布持った?」

星羅「持った!」

星夜「スマホは?」

星羅「持った!」

星夜「鍵は?」

星羅「…………」

星夜「忘れてるじゃん」

星羅「あっ!」

慌てて取りに戻る星羅。

豹牙「……相変わらずだな」

來夢「星夜がいると安心だね」

星羅「星夜ー! 早く行こう!」

星夜「はいはい」

二人が並んで出ていく。

星羅「楽しみだね!」

星夜「うん」

その背中を見送りながら――。

豹牙「…………」

豹牙はスマホを握る。

そして、連絡先の中から星羅の名前を開いた。

星羅

まだ、何も送っていない。

豹牙「…………」

『今度、二人で遊ばねぇ?』

そこまで打って、消す。

また打つ。

そして消す。

來夢「……豹牙?」

豹牙「……なんでもねぇ」

一方、夜凪も同じようにスマホを見ていた。

朔夜も。

黒羽も。

誰もまだ送れない。

そんな中――。

星羅のスマホが、ポケットの中で震えた。

星羅「……ん?」

歩きながら取り出す。

画面に表示された名前を見た瞬間――。

星羅「……!」

思わず笑顔になる。

『はるちゃん♡』

星羅「きた……!」

星夜「ん?」

星羅「はるちゃんから!」

星夜「……よかったな」

星羅「うん!」

星羅は嬉しそうにメッセージを開く。

そこには――。

『予定決まりました。○日なら空いてます。よかったら一緒に遊びませんか?』

星羅「…………!」

星羅の顔が一気に輝く。

星羅「星夜!」

星夜「何?」

星羅「はるちゃんと遊べる!」

星夜「よかったじゃん」

星羅「やったぁぁ!」

星羅は嬉しさのあまり、その場でぴょんと跳ねた。

星夜「……そんなに嬉しい?」

星羅「うん!」

そして星羅は、すぐに返信を打ち始める。

星羅「何着て行こうかなぁ……♡」

星夜「気が早いって」

星羅「あははっ!」

その後ろでは――。

まだ何も知らない月影のメンバーが、星羅をどう誘おうか真剣に悩んでいた。

夏休みの予定は、思っていた以上の速度で埋まり始めていた。