月影に咲く、一輪の華

星羅「……ふふっ」

撮ったばかりの写真を何度も見返しながら、星羅は嬉しそうに笑っていた。

遥愛「そんなに気に入りました?」

星羅「うん!」

遥愛「……俺も結構気に入ってます」

星羅「ほんと?」

遥愛「はい」

星羅「じゃあ、送るね♡」

遥愛「……また♡」

星羅「だって、はるちゃんだから」

遥愛「…………」

また顔が赤くなる。

その横で、さっきから何となく二人の様子を見ていた夜凪が、静かに口を開いた。

夜凪「……星羅」

星羅「ん?」

夜凪「俺とも、もう一枚撮らないか」

星羅「え?」

夜凪「さっき撮ったけど……ちゃんと二人で撮ってないだろ」

星羅「あ!」

星羅は思い出したように目を丸くする。

星羅「そういえばそうだね!」

夜凪「……嫌ならいい」

星羅「嫌じゃないよ!」

星羅はすぐに立ち上がる。

そして――。

遥愛「…………」

繋いでいた手を、ゆっくり離した。

遥愛は少しだけ寂しそうに手を見る。

星羅「夜凪、こっちおいで!」

夜凪「……ああ」

二人が並ぶ。

星羅「どう撮る?」

夜凪「普通でいい」

星羅「じゃあ、笑って」

夜凪「……苦手」

星羅「ふふっ」

星羅が笑いながら夜凪の頬を指でつつく。

星羅「ほら、ちょっと笑った」

夜凪「……お前が笑わせてるんだろ」

星羅「じゃあ、そのまま!」

パシャッ。

写真を確認する。

星羅「……いい!」

夜凪「そうか」

星羅「夜凪、やっぱり綺麗だね」

夜凪「…………」

星羅「顔が綺麗」

夜凪「……そういうこと、普通に言うよな」

星羅「だって本当だもん」

夜凪は少しだけ目を逸らした。

けれど、その口元はほんの少し緩んでいる。

遥愛「…………」

その様子を見ていた遥愛は、なぜか胸の奥が少しだけざわついた。

――何だろう。

自分でもよく分からない。

星羅「夜凪、写真送るね!」

夜凪「……ああ」

星羅「じゃあ、連絡先――」

夜凪「もう交換しただろ」

星羅「あ、そうだった」

星羅が笑う。

そしてスマホを操作する。

送信。

ピコン。

夜凪のスマホに写真が届く。

夜凪「…………」

画面を見る。

そこには、星羅と自分が並んで笑っている。

夜凪「……ありがとう」

星羅「どういたしまして!」

そして星羅は、何気なく遥愛のところへ戻ってくる。

星羅「はるちゃん!」

遥愛「はい」

星羅「待たせた?」

遥愛「……少しだけ」

星羅「ごめんね」

星羅は自然に遥愛の手を握り直した。

遥愛「…………」

その瞬間、胸の奥にあった小さなざわつきが消えていく。

星羅「次、何しようか?」

遥愛「……星羅さんが決めていいですよ」

星羅「じゃあ――」

星羅が嬉しそうに笑う。

その光景を見ていた夜凪は、自分のスマホに届いた写真をもう一度見た。

そして、ほんの少しだけ目を細める。

夜凪「…………」

――一枚の写真。

たったそれだけなのに。

なぜか、妙に嬉しかった。