月影に咲く、一輪の華

屋上に入ってきた男の子たちは、私たちを見ると少し驚いたような顔をした。

男「……あれ? 月影、いたのか」

黒羽「見りゃ分かんだろ」

男「いや、そうじゃなくて……」

男の子の視線が私に向く。

男「……女?」

星羅「こんにちは!」

男「……え?」

星羅「今日から転入してきた星羅です!」

男「いや、そうじゃなくて……なんで女子がここに?」

星羅「お昼ご飯食べに来たの!」

男「……」

なんだか不思議そうな顔をしている。

すると、隣にいた男の子が小声で話しかけた。

「おい……あれ、星夜の姉ちゃんじゃね?」

「マジ?」

「さっき校内で一緒にいるの見たぞ」

どうやらもう噂になっているらしい。

星羅「?」

私は何のことか分からず、首を傾げる。

すると、黒羽が面倒そうに口を開いた。

黒羽「用があるならさっさと言えよ」

男「……ああ、悪い。ちょっと聞きたいことがあって」

黒羽「何だ?」

男「最近、南校舎の裏に他校の奴らが来てるって話、知ってるか?」

その言葉を聞いた瞬間、屋上の空気が変わった。

さっきまで笑っていた豹牙が黙る。

朔夜も真剣な顔になる。

來夢「……また?」

黒羽「みてぇだな」

星羅「他校?」

私はよく分からずに聞き返す。

すると星夜が、私の方を見る。

星夜「姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「そこから離れてろ」

星羅「え?」

星夜「今からちょっと話す」

いつもより少し低い声。

その瞬間、私は星夜の腕を掴んだ。

星羅「……危ないことするの?」

星夜「大したことじゃねぇ」

星羅「本当に?」

星夜「ああ」

私はじっと星夜の顔を見る。

嘘をついているようには見えない。

でも、さっき暴走族だと知ったばかりなのに、いきなり他校との話なんて聞いたら心配になる。

星羅「……怪我しない?」

星夜「しねぇよ」

星羅「絶対?」

星夜「絶対」

星羅「……分かった」

渋々、腕から手を離す。

すると豹牙が私を見て、少しだけ笑った。

豹牙「お前、ほんと星夜のことになると過保護だな」

星羅「当たり前だよ!」

豹牙「自分の方が強ぇくせに?」

星羅「それとこれとは別!」

豹牙「ははっ」

黒羽「まあ、今日はまだ何も起きてねぇ。気にすんな」

星羅「うん!」

私は笑って頷いた。

でも――。

さっきまでとは明らかに違うみんなの顔を見て、なんとなく思った。

この学校って、本当に普通の学校じゃないんだ。

そして私はまだ知らなかった。

今日のこの小さな出来事が、これから始まる月影との日々に繋がっていくことを。