月影に咲く、一輪の華

紅蓮「星羅、遥愛の予定全部埋める気じゃねぇか?」

その言葉に、星羅はきょとんと瞬きをした。

星羅「……そうかな?」

紅蓮「そうだろ」

星羅は少し考える。

そして――。

星羅「じゃあね、はるちゃんと買い物行きたい!」

遥愛「……またですか?」

星羅「うん!」

星羅「あと、一緒にカフェ行きたい」

遥愛「カフェ……」

星羅「それから映画も見たいし、動物園も行きたい!」

遥愛「動物園?」

星羅「うん! 可愛い動物いっぱい見たい!」

星羅の目がどんどん輝いていく。

星羅「水族館もいいなぁ。あと、遊園地!」

遥愛「…………」

星羅「それとね、甘いもの食べに行きたい。パンケーキとかパフェとか!」

朧「…………」

パンケーキという言葉に、朧が少しだけ反応する。

星羅「あと、一緒に料理もしたいし」

遥愛「料理は今日しましたよね?」

星羅「もっと色々作りたい!」

瑛翔「……まだ増える?」

星羅「うん!」

即答。

星羅「服も一緒に選びたいし、ゲームもしたいし」

指を折りながら予定を数えていく。

星羅「あと、海も行きたい!」

遥愛「…………」

星羅「紅葉も見たいし、桜も見たいし」

遥愛「それ、季節ごとに会うつもりですか?」

星羅「うん!」

遥愛「…………」

また即答。

紅蓮「ほらな」

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

月影の男たちが、無言で顔を見合わせる。

星羅「あとね――」

豹牙「まだあんのかよ」

星羅「あるよ?」

豹牙「…………」

星羅「はるちゃんと一緒に写真も撮りたい!」

遥愛「写真?」

星羅「うん!」

星羅「いっぱい撮って、思い出にしたい」

遥愛「…………」

遥愛は照れながらも、小さく笑った。

遥愛「……いいですよ」

星羅「ほんと!?」

遥愛「はい」

星羅「やったぁ!」

星羅が遥愛の腕に抱きつく。

星夜「姉ちゃん……」

星羅「ん?」

星夜「もう遥愛の予定、来年まで埋める勢いじゃん」

星羅「だって、やりたいこといっぱいあるもん」

瑛翔「…………」

瑛翔は苦笑する。

瑛翔「俺たち、星羅ちゃんと二人で遊びに行ったことないのにね」

紅蓮「……それな」

刹那「…………」

豹牙「俺なんか、まだ星羅とまともに出かけたことすらねぇぞ」

來夢「俺も」

朔夜「……俺もだ」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

誰もが思っていた。

星夜は弟だから仕方ない。

星羅が星夜と一緒にいるのは当然。

けれど――遥愛は違う。

星羅は、遥愛と二人で過ごす未来を次々と思い描いている。

しかも本人は、悪気など一切ない。

星羅「はるちゃん、次いつ遊べる?」

遥愛「……まだ今日会ったばかりですよ?」

星羅「でも、もう次の予定決めたい」

遥愛「……ふふ」

星羅「ねぇ?」

遥愛「……じゃあ、また今度」

星羅「『また今度』じゃなくて、日にち決めようよ!」

遥愛「星羅さん、気が早すぎますって」

星羅「だって離れたくないんだもん」

遥愛「…………」

遥愛がまた真っ赤になる。

豹牙「…………」

來夢「…………」

瑛翔「…………」

刹那「…………」

紅蓮「…………」

朧「…………」

夜凪「…………」

全員、黙ってその光景を見つめる。

星羅「ねぇ、はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「次はどこ行く?」

遥愛「…………」

星羅「私、はるちゃんとならどこでも行きたい」

遥愛「……じゃあ」

遥愛は少し考えてから笑う。

遥愛「次は、星羅さんが行きたいところに行きましょう」

星羅「……ほんと?」

遥愛「はい」

星羅「じゃあ、いっぱい考える!」

その瞬間、星羅の顔がまたぱっと明るくなった。

紅蓮「……こりゃ本当に全部埋まるな」

豹牙「…………」

豹牙は深いため息を吐く。

豹牙「……俺らも、そろそろ本気出さねぇとやべぇぞ」

來夢「……うん」

朔夜「同感だ」

黒羽「……完全に出遅れたな」

夜凪「…………」

誰も口にはしなかったが――。

星羅と二人で過ごす時間が欲しい。

その気持ちは、今までよりずっと強くなっていた。