月影に咲く、一輪の華

朱雀の倉庫へ戻る道中も、星羅はずっと遥愛の手を握ったままだった。

星羅「はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「今日、何時までいられる?」

遥愛「え?」

星羅「できればずっといてほしいなぁって」

遥愛「…………」

まただ。朝からずっと、この調子。

遥愛は隣を歩く星羅をちらりと見る。

嬉しそうに笑っている横顔。

本当に、自分のことを気に入ってくれているらしい。

遥愛「……星羅さんって」

星羅「ん?」

遥愛「俺のこと、そんなに可愛いですか?」

星羅「うん!」

即答。

遥愛「…………」

星羅「今まで見た中で一番可愛いかも」

遥愛「……一番?」

星羅「うん」

遥愛「…………」

その言葉に、遥愛は完全に黙り込んだ。

顔が熱い。

星羅はそんな遥愛の顔を覗き込む。

星羅「また赤くなってる」

遥愛「……星羅さんのせいです」

星羅「ふふっ」

星羅は楽しそうに笑い、繋いだ手をさらに強く握った。

少し後ろを歩いていたみんなは、その光景をずっと見せられている。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

豹牙「……なぁ」

來夢「何?」

豹牙「俺ら、いつまでこれ見せられるんだ?」

來夢「知らないよ……」

朔夜「本人が楽しそうだから、何も言えないな」

黒羽「……そうだな」

夜凪「…………」

夜凪は前を歩く星羅を見る。

星羅「はるちゃん、あそこ寄ってみる?」

遥愛「いいですよ」

星羅「やった!」

また嬉しそうに笑う。

夜凪「…………」

昨日までなら。

自分たちのところへ戻ってくれば、自然と星羅は隣にいた。

話しかければ笑ってくれた。

触れれば、嬉しそうに笑ってくれた。

それが当たり前だと思っていた。

でも――。

たった一人、遥愛が現れただけで。

星羅の視線は、ほとんどその一人に向いている。

夜凪「…………」

少しだけ、寂しい。

そんな感情を抱いている自分に気づいて、夜凪は目を伏せた。

一方、星夜はそんなみんなの様子を見ていた。

星夜「…………」

そして小さく笑う。

星夜「まぁ、姉ちゃんが楽しそうならいいか」

瑛翔「星夜、割り切れてるね」

星夜「俺は弟だから」

瑛翔「……強いなぁ」

星夜「でも――」

星夜は遥愛を見る。

星羅に手を握られながら、照れたように俯いている。

星夜「遥愛は弟じゃないからな」

瑛翔「…………」

星夜「そりゃ、みんな複雑になるよ」

瑛翔「……分かってる」

そして朱雀の倉庫が見えてきた。

星羅「着いた!」

遥愛「本当ですね」

星羅「はるちゃん、一緒に入ろ!」

遥愛「はい」

二人が先に倉庫へ入っていく。

その背中を見ながら――。

豹牙「……俺、今日こそ星羅と話す」

來夢「俺も」

朔夜「……俺も少しは構ってもらいたい」

黒羽「同じだな」

夜凪「…………」

瑛翔「みんな、頑張って」

紅蓮「ははっ。今日は競争だな」

そして扉の向こうでは。

星羅「はるちゃん、こっち!」

遥愛「はい」

また手を繋ぐ二人。

――星羅の猛烈な「可愛い」が、まだまだ終わる気配はなかった。