月影に咲く、一輪の華

昼食を終える頃には、星羅はすっかり遥愛の隣が定位置になっていた。

星羅「はるちゃん、おいしい?」

遥愛「はい。美味しいです」

星羅「よかったぁ」

星羅は嬉しそうに笑うと、また遥愛の髪を撫でる。

遥愛「…………」

瑛翔「……本当にずっとだね」

紅蓮「朝から一回も離れてねぇんじゃねぇか?」

刹那「……一回くらい離れただろ」

星夜「いや」

星夜が即答する。

星夜「離れてない」

朧「…………」

朧も思い返してみる。

確かに。

朝からずっと――。

頬をつついて。

頭を撫でて。

腕に抱きついて。

隣に座って。

また抱きついて。

星羅「はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「午後、何する?」

遥愛「……さっき散歩って言ったじゃないですか」

星羅「そうだった!」

遥愛「ふふ」

思わず遥愛が笑う。

その笑顔を見た星羅の目が、また輝いた。

星羅「……笑った!」

遥愛「え?」

星羅「今の笑顔、可愛い!」

遥愛「…………」

星羅「もう一回笑って」

遥愛「無理です」

星羅「なんで?」

遥愛「星羅さんがそんなに見てくるから……」

星羅「じゃあ見ない」

そう言いながら、星羅は遥愛の顔から目を逸らす。

遥愛「…………」

少しほっとした。

――と思った瞬間。

星羅「…………ちらっ」

遥愛「見てるじゃないですか!」

星羅「あははっ!」

瑛翔「もう完全に遊んでるね」

紅蓮「遥愛、諦めろ」

遥愛「……はい」

そんな二人を見ながら、星夜は少しだけ笑っていた。

星夜「姉ちゃん、昔から可愛いもの見つけるとこうなるんだよ」

瑛翔「へぇ」

星夜「ぬいぐるみとか動物とか、めちゃくちゃ可愛がる」

紅蓮「なるほどな」

刹那「だから遥愛か」

星夜「たぶん」

星羅「何の話?」

星夜「姉ちゃんの可愛いもの好きについて」

星羅「だって可愛いもの好きなんだもん」

遥愛「…………」

星羅「はるちゃんも可愛いし」

遥愛「……ありがとうございます」

また赤くなる。

星羅「ふふっ」

そして、星羅は突然立ち上がった。

星羅「じゃあ!」

遥愛「?」

星羅「散歩行こう!」

遥愛「今から?」

星羅「うん!」

星羅は遥愛の手を取る。

ぎゅっ。

遥愛「…………」

星羅「一緒に行こ?」

遥愛「…………はい」

瑛翔「……二人で?」

星羅「うん!」

瑛翔「…………」

紅蓮「おい」

瑛翔「何?」

紅蓮「顔」

瑛翔「……何?」

紅蓮「めちゃくちゃ不満そう」

瑛翔「…………」

刹那「俺も行く」

星羅「え?」

刹那「……散歩なら別にいいだろ」

紅蓮「俺も行く」

瑛翔「じゃあ俺も」

朧「…………俺も」

星夜「俺も行く」

一瞬にして人数が増えた。

星羅「ふふっ」

星羅は楽しそうに笑う。

星羅「じゃあ、みんなで行こう!」

遥愛「…………」

遥愛は少しだけ苦笑する。

けれど、握られた手は――。

離したくないような、そんな気持ちが少しだけ残っていた。