月影に咲く、一輪の華

昼前になり、朱雀の倉庫にはまた賑やかな声が響いていた。

星羅「はるちゃん、これ切ってくれる?」

遥愛「はい」

星羅「ありがとう!」

遥愛が野菜を切っている横で、星羅はずっとその姿を眺めている。

遥愛「……星羅さん?」

星羅「ん?」

遥愛「さっきからずっと見てません?」

星羅「だって可愛いんだもん」

遥愛「…………」

また顔が赤くなる。

星羅「ふふっ」

星羅は嬉しそうに笑って、遥愛の頭を撫でた。

星羅「はるちゃん、料理してる姿も可愛い」

遥愛「……もう、やめてください」

星羅「なんで?」

遥愛「恥ずかしいからです……」

星羅「可愛い」

遥愛「それもです……!」

瑛翔「はははっ!」

紅蓮「遥愛、完全に振り回されてんな」

刹那「……顔真っ赤だぞ」

遥愛「分かってます……」

朧「…………」

朧は黙々と料理を続けながら、二人の様子を横目で見ていた。

紅蓮「朧」

朧「何?」

紅蓮「お前、昨日は星羅にパンケーキ作って、今日は遥愛に全部持ってかれてんな」

朧「…………」

朧は少しだけ手を止める。

朧「……別に」

紅蓮「そうか?」

朧「星羅が楽しそうなら、それでいい」

その言葉は本心だった。

けれど――。

朧「…………」

ほんの少しだけ、寂しい。

昨日までは、自分の作ったパンケーキをあんなに嬉しそうに食べてくれていた。

今日は、その笑顔がほとんど遥愛に向いている。

星羅「朧!」

朧「……ん?」

突然呼ばれて顔を上げる。

星羅「これ、味見して!」

星羅が小皿を差し出す。

朧「……俺?」

星羅「うん」

朧は少し驚いたように目を瞬かせ、それを受け取る。

一口食べる。

朧「……美味しい」

星羅「ほんと?」

朧「うん」

星羅「よかった!」

星羅が嬉しそうに笑う。

その笑顔を見て、朧も少しだけ笑った。

星羅「やっぱり朧にも食べてもらいたかった」

朧「…………」

その一言で、胸の奥にあった小さな寂しさが消えていく。

朧「……ありがとう」

星羅「ふふっ」

すると――。

遥愛「星羅さん」

星羅「ん?」

遥愛「これ、次どうします?」

星羅「はるちゃん!」

星羅はまた遥愛のところへ戻っていく。

朧「…………」

紅蓮「……忙しいな」

朧「……うん」

瑛翔「でも、なんだかんだ嬉しそうじゃん」

朧「…………」

否定できない。

その頃、星羅は遥愛の隣で料理を続けながら、また頬をつついていた。

星羅「はるちゃん」

遥愛「はい?」

星羅「午後は何して遊ぶ?」

遥愛「……まだ決まってないんですか?」

星羅「うん!」

遥愛「じゃあ……」

少し考えて。

遥愛「散歩とか?」

星羅「いいね!」

遥愛「……本当に俺と行くんですか?」

星羅「もちろん!」

星羅は嬉しそうに笑う。

その横顔を見て、遥愛はまた頬を赤くした。

――こんなに可愛い子に、これだけ懐かれてしまったら。

意識するなという方が無理だった。