月影に咲く、一輪の華


しばらくすると、午後の授業が始まるチャイムが鳴る。

叶多「じゃあ、俺は教室戻るわ」

來夢「叶多はサボらねぇの?」

叶多「俺までここにいたら、誰も俺のこと覚えてくれなくなるだろ」

黒羽「ははっ、それもそうだな」

叶多「それに俺、星羅と同じクラスだから。教室戻ったらまた話せるし」

星夜「……そうしてくれ」

叶多「ん?」

星夜は眠っている星羅を見下ろしたまま、淡々と口を開く。

星夜「……でも、星羅のこと好きになるなよ」

「…………」

屋上の空気が、一瞬で止まった。

叶多「…………は?」

來夢「え?」

豹牙「……おい」

黒羽「ははっ……!」

黒羽が堪えきれないように笑い出す。

黒羽「お前、そこまで言うか?」

星夜「言う」

即答だった。

叶多「いや、俺たち今日会ったばっかなんだけど?」

星夜「関係ない」

叶多「いやいやいや!」

來夢「星夜、ガチじゃん!」

豹牙「……シスコン極まってんな」

叶多「……分かったよ。好きになる予定なんかねぇし」

星夜「ならいい」

叶多「お前、怖ぇよ……」

星羅「んぅ……」

私が小さく身じろぎすると、全員が一斉にこちらを見る。

星夜「……静かにしろ」

來夢「お前が一番うるさくしてただろ」

星夜「…………」

來夢「痛っ!」

星夜が投げたペットボトルが來夢の頭に当たった。

來夢「なんで俺!?」

黒羽「はははっ!」

屋上に笑い声が響く。

私はそんな騒ぎも知らず、星夜の膝の上で気持ちよさそうに眠り続けていた。