月影に咲く、一輪の華

星羅「朧、これも美味しい!」

朧「……本当?」

星羅「うん。こっちの苺の方も食べてみて」

朧「…………」

差し出されたフォークを見る。

朧「……俺が?」

星羅「うん」

朧は少しだけ迷ってから、素直に一口食べた。

朧「……美味しい」

星羅「でしょ?」

嬉しそうに笑う星羅。

そのやり取りを――月影の五人は、完全に置いていかれていた。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星夜だけは、いつものことのようにパンケーキを食べている。

星夜「……何してんの?」

豹牙「……いや」

豹牙が眉間を押さえる。

豹牙「俺らが知らない間に、何があったんだよ」

來夢「本当にそれ」

朔夜「ここまでとは思わなかった」

黒羽「……俺もだ」

夜凪「…………」

夜凪は黙ったまま、朧と星羅を見る。

星羅は楽しそうに朧と話している。

まるで、昔からずっと一緒だったかのように。

瑛翔「星羅ちゃん、これも食べる?」

星羅「食べる!」

瑛翔「じゃあ、こっちも」

星羅「ありがとう!」

刹那「飲み物もある」

星羅「わぁ、ありがとう!」

星羅は次々と朱雀のメンバーから差し出されるものを受け取っていく。

そして――。

星羅「みんな優しいね」

瑛翔「そりゃ星羅ちゃんだからね」

星羅「ふふっ」

朧「…………」

朧は黙って星羅の皿を見る。

朧「……もう少し食べる?」

星羅「うん!」

朧「じゃあ取ってくる」

星羅「ありがとう!」

朧が立ち上がる。

それを見た豹牙が、思わず立ち上がった。

豹牙「俺が行く」

朧「…………?」

豹牙「……別に」

朧「……そう」

豹牙が皿を受け取る。

豹牙「何枚?」

星羅「えっと……二枚!」

豹牙「……分かった」

星羅「豹牙ありがとう!」

豹牙「……おう」

皿を持って戻ってくる。

すると――。

來夢「じゃあ俺、飲み物持ってくる」

星羅「ありがとう!」

朔夜「俺も何か探してくる」

星羅「そんなにしてくれなくても……」

黒羽「まあいいだろ」

星羅「…………?」

気づけば。

月影の全員が、何かしら星羅の世話を焼こうとしている。

星羅は嬉しそうに笑っているだけ。

一方――。

朱雀のメンバーは、そんな月影の様子を面白そうに眺めていた。

瑛翔「……なるほどね」

豹牙「何だよ」

瑛翔「月影って、こんな感じなんだ?」

豹牙「…………」

瑛翔「星羅ちゃんがいると、みんな分かりやすいね」

豹牙「うるせぇ」

刹那「……確かに」

紅蓮「ははっ」

紅蓮まで楽しそうに笑う。

紅蓮「お前ら、焦ってんだろ」

豹牙「焦ってねぇ」

紅蓮「顔に出てるぞ」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

星羅「?」

星羅だけが、何のことか分かっていない。

そして星夜はパンケーキを頬張りながら、ぼそっと呟いた。

星夜「……姉ちゃん、人気者だな」

星羅「え?」

星夜「何でもない」

星羅「?」

その横で――。

豹牙は朧を見る。

朧は星羅を見る。

來夢も。

朔夜も。

夜凪も。

黒羽も。

星羅と朱雀の距離が、ここまで近くなっていたなんて。

月影の男たちは、思っていた以上に焦っていた。