月影に咲く、一輪の華


それから数日が経った。

背中の傷も手首の傷も、まだ完全に消えたわけじゃない。

けれど、痛みはずいぶん引いた。

星羅「もう大丈夫だよ」

星夜「その台詞、信用していいのか?」

星羅「今回は本当に大丈夫!」

豹牙「……まぁ、前より顔色はいいな」

來夢「無理してないならいいけど」

星羅「してないってば」

そう言って笑う。

今日は――約束していた朱雀へ会いに行く日。

星羅は朝から少し浮かれていた。

何となく、楽しみだった。

特に――。

あのパンケーキ。

前に朧が作ってくれた、ふわふわのパンケーキ。

あれを食べてから、星羅はすっかり朧に懐いてしまっていた。

朧を見ると、なんとなく安心する。

静かで、優しくて。

それに――どこか夜凪と似た空気を持っている。

だからなのか。

星羅は今日、朧に会えるのを密かに楽しみにしていた。

そして朱雀の拠点へ到着する。

星羅「……ここだ!」

星夜「テンション高ぇな」

星羅「だって久しぶりなんだもん」

扉の前に立つ。

そして――。

星羅「やっほー!」

勢いよく扉を開けた。

星羅「遊びに来たよー!」

すると、奥からすぐに声が返ってくる。

瑛翔「星羅ちゃん!」

刹那「来たか」

そして――。

少し遅れて、朧が姿を見せた。

星羅「…………!」

顔を見た瞬間。

星羅の表情がぱっと明るくなる。

星羅「朧!」

朧「……星羅」

その声を聞いた瞬間、星羅は駆け出した。

星夜「姉ちゃん! 走るなって――」

遅かった。

星羅「朧ー!」

ぎゅっ。

そのまま朧に抱きつく。

朧「…………」

完全に固まった。

瑛翔「…………え?」

刹那「…………」

紅蓮「…………」

月影のメンバーも。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

全員、目を丸くしている。

星羅はそんなことなど気にせず、朧を抱きしめたまま笑った。

星羅「会いたかった!」

朧「…………」

星羅「この前のパンケーキ、すごく美味しかったから」

朧「……そう」

星羅「今日も食べたい」

朧「…………」

星羅「作って?」

朧は少しだけ目を瞬かせる。

けれど――。

ほんの少し、口元が緩んだ。

朧「……いいよ」

星羅「ほんと!?」

朧「うん」

星羅「やったぁ!」

嬉しそうに笑う。

瑛翔「ちょっと待って」

星羅「ん?」

瑛翔「俺たちには?」

星羅「え?」

瑛翔「『会いたかった!』とかないの?」

星羅「……あ」

瑛翔「忘れてたでしょ」

星羅「ご、ごめん!」

瑛翔「ひどいなぁ」

刹那「……朧には一直線だったな」

紅蓮「…………」