月影に咲く、一輪の華


星羅「少しだけ、甘えてもいい?」

その言葉に――。

倉庫の空気が止まった。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

そして。

星夜「……は?」

全員が振り返る。

星夜はソファーの端に座ったまま、信じられないものを見るような顔をしていた。

星夜「姉ちゃん」

星羅「ん?」

星夜「それ、俺に言ってんの?」

星羅「……え?」

星夜「甘えるって」

星羅「うん……?」

星夜「ならこっち来いよ」

そう言って、自分の隣をぽんぽんと叩く。

星羅「……いいの?」

星夜「何言ってんだよ」

星羅は少し迷ったあと、ゆっくり星夜の隣へ移動する。

星夜「ほら」

星羅「…………」

星夜が腕を広げる。

星羅「……ふふ」

そのまま、星羅が星夜の胸元へ身体を預けた。

ぎゅっ。

星夜「…………」

星羅「……落ち着く」

星夜「そりゃよかった」

星羅「星夜の匂いする」

星夜「姉ちゃん、それ本人に言う?」

星羅「嫌だった?」

星夜「……別に」

少し照れながら、星羅の頭を撫でる。

星夜「今日くらい、好きなだけ甘えろ」

星羅「……うん」

その光景を見ていた豹牙が、ぼそっと呟く。

豹牙「……ずりぃ」

來夢「え?」

豹牙「……何でもねぇ」

けれど、明らかに不満そうだ。

來夢「……俺らも甘えられたらいいのにな」

朔夜「……同感だ」

黒羽「お前ら……」

夜凪「…………」

夜凪だけは何も言わない。

ただ、星羅が安心したように星夜へ寄りかかっている姿を見ていた。

星羅「……ねぇ、星夜」

星夜「ん?」

星羅「昨日ね」

星夜「うん」

星羅「本当は……すごく怖かった」

星夜「…………」

星羅「でも、星夜がいたから頑張れた」

星夜「……俺も」

星羅「え?」

星夜「姉ちゃんがいたから、最後まで立ってられた」

星羅「…………」

二人はしばらく何も言わなかった。

ただ、互いの存在を確かめるように寄り添っている。

その姿を見ながら――。

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

それぞれが思う。

――あんなふうに、星羅に甘えてもらえたら。

そして同時に。

――自分にも、あんな顔を見せてほしい。

まだ誰も、それを「恋」だとは口にしない。

けれど星羅への想いは、もう確実に動き始めていた。