月影に咲く、一輪の華

星羅「……なんか、みんな変じゃない?」

ぽつりと呟く。

來夢「え?」

星羅「さっきから、みんな私のこと見てない?」

一瞬。

全員が固まった。

豹牙「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「…………」

來夢「……気のせいじゃない?」

星羅「そうかなぁ」

首を傾げる。

豹牙「……お前が怪我してっからだろ」

星羅「でも、もう大丈夫だよ?」

豹牙「大丈夫じゃねぇ」

思わず強い口調になる。

星羅「…………」

豹牙「……あ」

豹牙が少し気まずそうに目を逸らした。

豹牙「……悪い」

星羅「ううん」

星羅は笑う。

星羅「心配してくれてるんだね」

豹牙「…………まぁな」

その返事に、來夢が小さく笑った。

來夢「豹牙、素直じゃん」

豹牙「うるせぇ」

星羅「ふふっ」

すると朔夜が、星羅の前に小さな袋を置いた。

星羅「これ?」

朔夜「さっき買ってきた時、もう一つ買ってた」

星羅「え?」

朔夜「温かい飲み物」

星羅「……ありがとう」

星羅が両手でカップを包む。

ほっと息を吐く。

星羅「温かい……」

朔夜「少しでも身体が楽になればいい」

星羅「優しいね」

朔夜「…………」

その一言で、朔夜の耳がほんの少し赤くなる。

來夢「朔夜も分かりやすいな」

朔夜「來夢」

來夢「はい」

朔夜「黙れ」

星羅「ふふっ」

また笑う。

その笑顔を見て――。

來夢は、胸の奥がくすぐったくなる。

もっと見たい。

もっと笑わせたい。

さっきまでなら、そんなこと考えもしなかった。

けれど今は――。

星羅が笑うだけで、嬉しい。

そして黒羽も、その気持ちを少しずつ自覚し始めていた。

星羅「黒羽?」

黒羽「ん?」

星羅「さっきから静かだけど、疲れた?」

黒羽「いや」

星羅「本当に?」

黒羽「……お前を見てただけ」

星羅「え?」

黒羽「…………」

言ってから、自分でも少し驚いた。

星羅「私を?」

黒羽「ああ」

星羅「なんで?」

黒羽「…………」

答えられない。

ただ――。

昨日、星羅を失いかけた時。

胸の奥が締めつけられた。

そして今、こうして笑っている星羅を見ていると、安心する。

黒羽「……無事でよかったと思ってな」

星羅「…………」

星羅が柔らかく笑う。

星羅「ありがとう」

黒羽「…………ああ」

そのやり取りを見ていた豹牙が、何とも言えない顔をする。

豹牙「……チッ」

來夢「また?」

豹牙「何でもねぇ」

夜凪は黙ったまま、そんな全員を見ていた。

そして――。

夜凪「……星羅」

星羅「ん?」

夜凪「今日はもう、俺たちのこと気にしなくていい」

星羅「でも――」

夜凪「自分のことだけ考えろ」

星羅「…………」

少しだけ考えてから、星羅は頷いた。

星羅「……分かった」

夜凪「それでいい」

星羅「じゃあ……」

星羅はソファーへ身体を預ける。