月影に咲く、一輪の華

扉の外。

豹牙「……なぁ」

來夢「ん?」

豹牙「俺ら、何で廊下に並んでんだ?」

來夢「……知らない」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

四人とも、妙に気まずい顔をしていた。

中では夜凪と星羅が二人きり。

ただそれだけなのに、なぜか落ち着かない。

豹牙「……別に、気になってるわけじゃねぇけど」

來夢「俺も」

朔夜「俺もだ」

黒羽「…………」

豹牙「黒羽は?」

黒羽「……俺は総長だからな」

豹牙「何の言い訳だよ」

その時――。

ガチャ。

扉が開いた。

夜凪「何してんだ、お前ら」

豹牙「…………」

來夢「…………」

朔夜「…………」

黒羽「…………」

夜凪「……?」

四人が揃って沈黙する。

夜凪「気持ち悪いな」

豹牙「うるせぇ」

夜凪が出ていくと、入れ替わるように星羅が顔を覗かせた。

星羅「みんな、どうしたの?」

來夢「いや、ちょっと……」

星羅「?」

豹牙「……腹減ってねぇ?」

星羅「え?」

豹牙「朝飯」

星羅「……あ」

そういえば、昨日からほとんど何も食べていない。

星羅「ちょっとお腹空いたかも」

豹牙「じゃあ食え」

星羅「何かあるの?」

豹牙「…………」

豹牙が固まる。

來夢「ないんかい」

豹牙「うるせぇ!」

すると朔夜が立ち上がった。

朔夜「俺、買ってくる」

星羅「えっ、いいよ。私が――」

朔夜「駄目」

星羅「…………」

朔夜「怪我してるだろ」

星羅「でも……」

朔夜「食べたいものある?」

星羅「え?」

朔夜「何でもいい」

星羅「……じゃあ、甘いもの」

朔夜「分かった」

即答だった。

その横で來夢が慌てて立ち上がる。

來夢「俺も行く!」

朔夜「……何で?」

來夢「荷物持ち」

豹牙「じゃあ俺も行く」

黒羽「お前まで?」

豹牙「別に腹減っただけだ」

三人が立ち上がる。

星羅「……みんな、ありがとう」

その笑顔に――。

三人とも一瞬、言葉を失った。

來夢「……いや」

朔夜「…………」

豹牙「……別に」

三者三様に視線を逸らす。

そして黒羽は、その様子を見て小さく息を吐いた。

黒羽「……分かりやすくなってきたな」

夜凪「…………」

夜凪も黙って三人を見る。

そして――。

星羅だけが何も気づかず、嬉しそうに笑っていた。

星羅「じゃあ、気をつけてね」

來夢「うん!」

朔夜「ああ」

豹牙「任せろ」

三人が倉庫を出ていく。

扉が閉まった瞬間。

豹牙「……お前ら」

來夢「何?」

豹牙「星羅の好きな甘いもん、何だと思う?」

朔夜「…………」

來夢「…………」

三人が顔を見合わせる。

――誰が一番、星羅を喜ばせられるか。

そんな小さな競争が、いつの間にか始まっていた。