月影に咲く、一輪の華

翌朝。

星羅「……ん……」

目を開けると、見慣れた天井があった。

しばらくぼんやりしてから、昨日のことを思い出す。

星羅「…………」

胸の奥が、少しだけ苦しくなる。

けれど――。

星羅「……終わったんだ」

もう、あの人はいない。

そう思うと、ほんの少しだけ身体の力が抜けた。

ベッドから起き上がろうとする。

星羅「……っ」

背中が痛む。

星羅「いたた……」

その声に――。

ガチャ。

扉が開いた。

夜凪「起きた?」

星羅「夜凪……?」

夜凪「まだ寝てろ」

星羅「もう大丈夫だよ」

夜凪「その台詞、昨日何回聞いたと思ってる」

星羅「……ふふ」

夜凪「笑って誤魔化すな」

星羅「ごめん」

夜凪「それも禁止」

星羅「……厳しいね」

夜凪「お前が無茶するからだ」

そう言いながら、夜凪はベッドの横に水を置く。

星羅「ありがとう」

夜凪「ん」

星羅が水を飲む。

その横顔を見ながら、夜凪は何も言わない。

けれど――。

昨日、血の滲んだ手首で鎖を引き続けていた星羅の姿が、頭から離れなかった。

夜凪「…………」

星羅「どうしたの?」

夜凪「……いや」

星羅「?」

夜凪「……ちゃんとここにいるなと思って」

星羅「…………」

その言葉に、星羅の表情が柔らかくなる。

星羅「うん」

星羅「ここにいるよ」

その笑顔を見て――。

夜凪は、ほんの少しだけ目を逸らした。

夜凪「……ならいい」

扉の外では。

豹牙「……おい」

來夢「ん?」

豹牙「夜凪、長くねぇ?」

來夢「……確かに」

朔夜「……まだ手当てしてるんじゃないか」

豹牙「もう終わってんだろ」

黒羽「…………」

全員が扉を見る。

そして――。

誰も口には出さない。

けれど、全員が同じことを考えていた。

自分も、星羅のそばにいたい。

そんな気持ちが、昨日までよりずっと強くなっていた。