月影に咲く、一輪の華

男「次は――お前たち全員だ」

星羅「…………」

その言葉が、妙に重く響いた。

星羅はゆっくりと周囲を見る。

黒羽。

豹牙。

來夢。

朔夜。

夜凪。

そして――朱雀の紅蓮、刹那、瑛翔、朧。

自分を守ろうとして、ここまで来てくれた人たち。

星羅「……やめて」

男「何が?」

星羅「みんなを巻き込まないで……」

男「巻き込んでるのは俺じゃないよ」

男は笑う。

男「星羅ちゃん自身だよ」

星羅「……え?」

男「君は昔からそうだった」

一歩、近づく。

男「自分が傷つくのは平気なくせに、誰かが傷つくと耐えられない」

星羅「…………」

男「だから、君の周りにいる人間を使えばいい」

星羅「やめて……」

男「誰か一人でも傷つけば、君は自分から俺のところへ来る」

星羅「……そんなこと……」

男「するよ」

即答だった。

星羅「…………」

男「だって君は、そういう人間だから」

星羅の手が震える。

星夜「姉ちゃん」

星羅「…………」

星夜が隣に立つ。

星夜「聞くな」

星羅「でも……」

星夜「こいつの言葉、全部嘘だ」

男「嘘?」

男は笑う。

男「じゃあ、試してみる?」

星夜「……っ」

男がポケットからスマートフォンを取り出す。

そして画面を操作した。

ピッ。

直後――倉庫の外から、複数の着信音が鳴った。

瑛翔「……は?」

紅蓮「…………」

それぞれのスマートフォンが、一斉に震える。

黒羽「……どういうことだ」

來夢「俺のにも来た」

豹牙「……俺も」

朔夜「…………」

夜凪「…………」

画面には、全員同じ内容。

『星羅ちゃんを返せ。そうすれば、お前たちは無事だ』

星羅「…………」

男「君たちが星羅ちゃんを守ろうとするほど、面白くなる」

紅蓮「……趣味悪ぃな」

男「そうかな?」

紅蓮「てめぇが星羅に執着してる理由なんざ知らねぇ」

紅蓮が一歩前へ出る。

紅蓮「でもな」

目が鋭くなる。

紅蓮「星羅を脅しの道具に使った時点で――」

拳を握る。

紅蓮「俺の敵だ」

男「…………」

瑛翔「俺も」

刹那「……俺もだ」

朧「…………」

朧は何も言わない。

ただ、星羅を見る。

そして静かに男へ視線を戻す。

その目には明確な怒りがあった。