月影に咲く、一輪の華


その頃廃工場の中央では、黒羽たちが男を囲んでいた。

黒羽「……まだ聞きたいことがある」

男「…………」

黒羽「どうして今になって星羅を探し始めた」

男は黙っている。

豹牙「答えろ」

拳を握る豹牙。

來夢「お前、何年も星羅ちゃんを探してたのか?」

男「…………」

瑛翔「だったら、どうして今なんだよ」

しばらくの沈黙。

やがて男が笑った。

男「……見つけたからだよ」

朔夜「何を?」

男「星羅ちゃんが生きていることを」

黒羽「…………」

男「ずっと死んだと思ってた」

その言葉に、星夜が振り返る。

星夜「……死んだ?」

男「逃げたあと、見つからなかったからね」

星夜「…………」

男「でも数年前、偶然写真を見た」

男は口元を歪める。

男「笑ってたよ昔と同じ顔で。それで分かった。星羅ちゃんは生きてるって」

紅蓮「……だから追い始めたのか」

男「ああ」

紅蓮「くだらねぇ」

男「何とでも言えばいい」

男は星羅のいる奥を見る。

男「俺はただ、星羅ちゃんを取り戻したいだけだ」

夜凪「…………」

その声を聞いた瞬間、夜凪の表情が変わる。

夜凪「……取り戻す?」

男「そう」

夜凪「星羅はお前のものじゃねぇ」

男「…………」

夜凪「一度でも、星羅がお前のところに戻りたいって言ったか?」

男「…………」

夜凪「言ってねぇだろ」

男は答えない。

夜凪「なら、二度と『取り戻す』なんて言うな」

低い声が響く。

その時――奥から、かすかな声がした。

星羅「……夜凪……?」

全員が振り返る。

星羅がゆっくり目を開けていた。

星夜「姉ちゃん!」

星羅「……星夜……」

星夜がすぐに駆け寄る。

星羅「……大丈夫?」

星夜「それ俺の台詞だろ……!」

星羅「ふふ……」

痛みに顔を歪めながら、それでも笑う。

星夜「笑うなよ……傷、痛いんだろ」

星羅「……ちょっとだけ」

星夜「……もう」

星羅「でも、星夜が無事だったから」

星夜「…………」

また泣きそうになる。

その時――星羅の視線が、遠くにいる犯人へ向いた。

笑顔が消える。

星羅「…………」

身体が僅かに震えた。

夜凪「……星羅」

星羅「……大丈夫」

けれど犯人と目が合った瞬間――男が、静かに笑った。

男「久しぶりだね、星羅ちゃん」

星羅「…………」

その声を聞いた瞬間に星羅の指先が、また震え始めた。