月影に咲く、一輪の華

夜凪「……ここに寝かせる」

廃工場の奥にあった簡素なソファへ、夜凪が星羅をそっと横たえる。

星夜「姉ちゃん……」

星羅「…………」

意識は戻らない。

それでも星夜は、すぐ隣から離れようとしなかった。

星夜「……俺、そばにいる」

夜凪「……ああ」

夜凪は星羅の背中の傷を確認する。

服に滲んだ血を見て、眉が僅かに動いた。

夜凪「……結構深いな」

星夜「…………」

星夜の顔がまた曇る。

星夜「俺のせいで……」

夜凪「違う」

星夜「でも――」

夜凪「お前のせいじゃない」

夜凪はきっぱりと言った。

夜凪「星羅が自分で選んだんだ」

星夜「…………」

夜凪「お前を守るって」

星夜は唇を噛む。

星夜「……それが嫌なんだよ」

夜凪「…………」

星夜「姉ちゃんは、ずっと俺を守ってきた」

星夜「だから今度は俺が――」

言葉が詰まる。

星夜「……なのに、また守られてる」

夜凪「……だったら、これから変えればいい」

星夜「え?」

夜凪「今まで守られてきた分、これから守ればいい」

星夜「…………」

夜凪「一回で全部返そうとするな」

星夜は黙って星羅を見る。

そして、そっとその手を握った。

星夜「……姉ちゃん」