月影に咲く、一輪の華


星羅「…………」

その言葉を聞いた瞬間、星羅の目が潤んだ。

星羅「……うん」

星夜「だからもう……俺の前で、俺のために傷つかないでくれよ……」

星羅「…………」

星羅は何も言えなかった。

ただ、抱きしめてくる星夜の背中に腕を回す。

星羅「……ごめんね」

星夜「謝んな……」

星羅「でも……」

星羅は少しだけ身体を離し、星夜の顔を見る。

星羅「私、星夜のこと大好きだから」

星夜「…………」

星羅「守りたいって思っちゃうの」

星夜「……それでも」

涙を拭いながら、星夜が言う。

星夜「俺も姉ちゃんが大好きだから」

星羅「……うん」

その二人の姿を、少し離れた場所から見ていた月影と朱雀。

豹牙は拳を握りしめたまま、唇を噛んでいた。

豹牙「……クソ」

來夢「豹牙?」

豹牙「……あんなの見せられたら、何も言えねぇだろ」

朔夜「…………」

朔夜は星羅の背中を見る。

服には赤い跡が広がっている。

朔夜「まず、傷の手当てだ」

黒羽「そうだな」

夜凪「……俺がやる」

夜凪が星羅の方へ歩き出す。

けれど――。

星羅「……夜凪」

夜凪「ん?」

星羅「ごめんね」

夜凪「何が」

星羅「昨日も……今日も……」

夜凪「謝るな」

星羅「…………」

夜凪「お前が悪いわけじゃねぇ」

その言葉に、星羅は少しだけ目を伏せた。

夜凪「それより、背中見せろ」

星羅「……うん」

その頃紅蓮は、床に座り込んでいる犯人を見下ろしていた。

男「…………」

紅蓮「お前さ」

男「……何?」

紅蓮「星羅を自分のものだと思ってんのか?」

男「…………」

紅蓮「だったら、勘違いもいいところだ」

瑛翔「…………」

刹那「……彼女は、お前を選んでいない」

朧「…………」

男「……黙れ」

紅蓮「黙らねぇよ」

紅蓮がしゃがみ込む。

紅蓮「星羅ちゃんが誰の隣にいたいかは、星羅ちゃんが決める」

男「…………」

紅蓮「お前じゃねぇ」

男は黙ったまま、星羅を見る。

その視線に気づいた夜凪が、すっと星羅の前へ立った。

夜凪「……見るな」

男「…………」

夜凪「もう、お前が星羅を見る必要はない」

男「……お前もか」

夜凪「何が」

男「星羅ちゃんを守るつもり?」

夜凪「……ああ」

男「どうせまた傷つくよ」

夜凪「…………」

男「星羅ちゃんは、誰かを守るためなら自分を犠牲にするから」

夜凪「だから何だ」

男「だったら――」

男が笑う。

男「また俺が傷つければいい」

ドンッ!!

夜凪が男の胸倉を掴み、壁へ叩きつけた。

夜凪「……二度とその口で言うな」

男「…………」

夜凪「星羅を傷つける未来なんて――」

目が冷たくなる。

夜凪「俺たちが絶対に作らせねぇ」

その言葉に、黒羽が静かに頷いた。

黒羽「……そういうことだ」

そして紅蓮も立ち上がる。

紅蓮「月影」

黒羽「……朱雀」

二人の視線が交わる。

敵対していたはずの二人。

けれど今だけは――目的が同じだった。

星羅を、この男から完全に引き離すこと。