月影に咲く、一輪の華


ザッ――!

鋭い痛みが、星羅の背中を走った。

星羅「――っ……!」

痛みで息が止まる。

星夜「…………」

星羅の身体が、ぐらりと揺れる。

星夜「姉ちゃん……?」

星羅「…………」

ゆっくり背中を見ることはできない。

けれど、服に赤い跡が広がっていく。

星夜「……姉ちゃん?」

声が震える。

星羅「……大丈夫……」

星夜「大丈夫じゃねぇだろ!!」

星羅は、それでも星夜を抱きしめたまま離さない。

星羅「……星夜が無事なら……」

星夜「…………」

星羅「それで……いいの」

星夜「よくねぇよ……!」

星夜の目から涙が溢れる。

星夜「また……また俺のために……!」

その瞬間。

ガシッ!!

男の腕を、夜凪が掴んだ。

夜凪「……もう許さねぇ」

男「……っ!」

夜凪の目には、完全な怒りが浮かんでいた。

豹牙「星羅ちゃん!!」

豹牙が駆け寄る。

來夢「背中、血が出てる!」

朔夜「誰か布を!」

黒羽「瑛翔!」

瑛翔「分かってる!」

朱雀も一斉に動き出す。

紅蓮「……てめぇ」

紅蓮が男を睨む。

その声は、今まで聞いたことがないほど低かった。

紅蓮「星羅ちゃんに――」

拳を握る。

紅蓮「二度も手ぇ出しやがって。」

刹那「…………」

朧「…………」

二人も無言で犯人を囲む。

一方、星夜は震える手で星羅の背中に触れようとして――。

星羅「……触らないで」

星夜「……!」

星羅「今、触ったら……星夜の手、血で汚れちゃう」

星夜「そんなのどうでもいい!!」

星羅「…………」

星夜「姉ちゃんの方が大事だろ……!」

星羅は少しだけ目を見開く。

そして――痛みに耐えながら、星夜の頬へ手を伸ばした。

星羅「……泣かないで」

星夜「無理だよ……」

星羅「大丈夫だから」

星夜「またそれ言う……」

星羅「……だって」

小さく笑う。

星羅「星夜が生きてるから」

星夜「…………」

その言葉に、星夜はとうとう堪えきれず――。

星羅を強く抱きしめた。

星夜「……もう嫌だ」

星羅「……星夜」

星夜「もう姉ちゃんが俺の代わりに傷つくの、嫌だ……!」

星羅「…………」

星夜「俺だって……姉ちゃんを守りたい……!」

その声が、廃工場中に響いた。