月影に咲く、一輪の華

カチャッ――。

足元に転がっていた鍵を、誰かが拾い上げた。

星羅「……!」

振り返る。

そこにいたのは――夜凪だった。

夜凪「……動くな」

星羅「夜凪……」

夜凪は鍵を持ったまま、星羅の前まで歩いてくる。

そして、鎖の留め具に鍵を差し込んだ。

カチャン。

一つ。

カチャン。

二つ。

最後の鎖が外れる。

星羅「……!」

自由になった手首を一瞬見つめる。

けれど、そんなことを気にしている暇なんてなかった。

星羅「星夜……!」

顔を上げる。

少し離れた場所で、星夜がこちらを見ていた。

星夜「……姉ちゃん!」

二人が同時に駆け出す。

星羅「星夜!」

星夜「姉ちゃん!」

あと少し、もう少しで――。

その瞬間だった。

ドゴッ!!

紅蓮の拳が、男の顔面を捉えた。

男「――っ!」

男は吹き飛ばされ、床に叩きつけられる。

紅蓮「……二度と触るんじゃねぇよ」

男「…………」

男は床に手をつき、ゆっくり身体を起こした。

その視線の先には――星羅。

そして、星羅へ駆け寄る星夜。

男「…………星夜」

星夜「……?」

星羅へ向けていた顔を、ほんの一瞬だけ男へ向ける。

その瞬間男の目が、狂気に染まった。

男「……あの時」

懐から何かを取り出す。

ギラッ。

星夜「……!」

ナイフ。

男「あの時、殺しておくんだった」

星羅「……!」

男「お前がいるから――」

男は震えるように笑う。

男「星羅ちゃんは、俺を見てくれないんだ」

星夜「…………」

一瞬。本当に一瞬だった。

あまりにも突然のことに、星夜の身体が動かなかった。

男がナイフを振り上げる。

星夜「……っ」

目を閉じる。

星羅「――星夜ぁぁぁ!!」

ドンッ!!

星羅が、星夜へ飛びついた。

星夜「……姉ちゃん!?」

身体ごと星夜を庇う。