月影に咲く、一輪の華

男「……怖い?」

星羅「…………」

男は手の中の鍵を見せつけるように、ゆっくりと持ち上げた。

カチャ……

その金属音だけで、星羅の身体が強張る。

星羅「……っ」

昔の記憶が、鮮明に蘇る。

暗い部屋に冷たい床。

自分の手首に食い込んでいた鎖。

そして――その向こうで泣いていた、幼い星夜。

星羅「…………」

男「覚えてるよね、星羅ちゃん」

星羅「……やめて」

男「この鍵で、君を何度も――」

星羅「やめて!!」

声を震わせながら叫ぶ。

男は楽しそうに笑った。

男「まだ怖いんだ?」

星羅「…………」

男「昔と何も変わってないね」

星羅「違う……」

男「何が?」

星羅「私は……もう、あの時の私じゃない」

男「…………」

星羅は震える身体を必死に起こす。

鎖が引っ張られる。

ガシャンッ!!

星羅「私は……もう、星夜を守るだけの子供じゃない」

星夜「……姉ちゃん」

その声が聞こえた。

星羅は振り返る。

星夜が、まだふらつきながら立っている。

星羅「星夜……!」

星夜「……俺もいる」

星羅「……!」

星夜「もう、姉ちゃん一人に守らせねぇ」

星羅「…………」

星夜はゆっくり拳を握った。

星夜「だから……一緒に帰ろう」

星羅「……うん」