月影に咲く、一輪の華


その隙に――。

黒羽「夜凪、下がれ!」

夜凪「……!」

黒羽が飛び込み、犯人へ拳を振り抜く。

男は咄嗟に腕で防ぐ。

ドゴッ!!

黒羽「星羅を返せ」

男「……嫌だね」

黒羽「そうか」

黒羽の目が鋭くなる。

黒羽「なら、力ずくで取り戻す」

一方星羅は二人の戦いを見ながら、必死に鎖を引いていた。

ガシャンッ!!

星羅「……っ!」

手首の痛みが増していく。

それでも止めない。

星羅「星夜……」

視線の先の星夜もまた、敵を一人倒していた。

星夜「……姉ちゃん!」

星羅「星夜!」

星夜「もう少しだから!」

星羅「うん!」

星夜が走る。

その姿を見た瞬間――男が、ふっと笑った。

男「……そうだ」

星夜「……?」

男「その顔だよ」

星羅「…………?」

男「昔もそうだった」

星羅「……何を」

男「星夜くんが近づくと、君は必死に守ろうとする」

星羅「…………」

男「だから――」

男が懐から何かを取り出す。

星羅「……っ!」

それを見た瞬間。

星羅の顔から血の気が引いた。

それは――昔、星羅を拘束していた鎖の鍵だった。

男「これ、まだ持ってたんだ」

星羅「…………」

男「懐かしいでしょう?」

星夜「……姉ちゃん?」

星羅「…………」

身体が震える。

男「星羅ちゃん」

鍵を指先で弄びながら笑う。

男「君が本当に俺から逃げられると思ってる?」

星羅「…………」

そして――男は鍵を握りしめたまま、ゆっくり星羅へ近づいた。

カチャ……。

鎖が鳴る。

星羅の瞳が大きく揺れた。