月影に咲く、一輪の華


その瞬間。

星夜の膝から、力が抜けた。

星夜「……俺のせいで……姉ちゃんが……」

星羅「違う!!」

星羅が叫ぶ。

星羅「星夜のせいじゃない!!」

星夜「でも……!」

星羅「違うの!」

鎖を鳴らしながら、必死に星夜を見る。

星羅「私が……守りたかっただけ……!」

星夜「…………」

星羅「星夜は何も悪くない……!」

涙が頬を伝う。

星羅「だから……自分を責めないで……」

星夜「…………姉ちゃん」

けれど、星夜の目からも涙が落ちた。

あの日、自分は何もできなかったと思っていた。

違った。

自分が知らないところで――。

星羅は、自分の命を守るために傷を負っていた。

星夜「……姉ちゃん……」

拳を握りしめる。

星夜「俺……何も知らなかった……」

その声は、壊れそうなくらい震えていた。

ぽたり。

涙が床に落ちる。

星夜「姉ちゃんが……俺の代わりに……」

男「そうだよ」

星羅「…………!」

男は容赦なく続けた。

男「君が眠っている間、星羅ちゃんは君を守ろうとしていた」

男「だから傷ついた」

男「だから俺は、星羅ちゃんを繋いだ」

男「君を守ろうとして暴れないようにね」

星夜「…………」

男「それでも星羅ちゃんは、最後まで君を気にしてた」

星羅「……やめて……」

男「自分が苦しくても、ずっと君の名前を呼んでたよ」

星夜「…………」

男「『星夜を傷つけないで』って」

星夜「…………っ」

完全に限界だった。

星夜「……う……」

肩が震える。

星夜「……あ……」

そのまま、床に手をつく。

星夜「……姉ちゃん……」

星羅「星夜……!」

星夜「ごめん……」

星羅「違う!」

星夜「ごめん……姉ちゃん……!」

星羅「謝らないで!」

星夜「俺……何もできなかった……!」

星羅「星夜は悪くない!!」

けれど星夜には届かない。

昔の記憶と、今の光景が完全に重なっていた。

幼い自分と鎖に繋がれた姉。