月影に咲く、一輪の華

犯人「星夜くん」

星夜「…………」

犯人「君、知ってた?」

星夜「……何を」

犯人「星羅ちゃんの身体に残ってる傷のこと」

星羅「――やめて!」

声を張り上げる。

星羅「それ以上言わないで!」

鎖が激しく鳴る。

ガシャンッ! ガシャンッ!

星羅は必死に身体を動かし、男の方へ手を伸ばす。

星羅「お願い……! 星夜には言わないで……!」

けれど、鎖は外れない。

星羅「……っ!」

どうにか男の口を塞ごうと身を乗り出す。

しかし届かない。

男「無駄だよ、星羅ちゃん」

星夜「……何の話だよ」

男「君は別の場所に連れていったんだ」

星夜「…………」

男「俺には必要なかった」

星羅「やめて……!」

男「だから――」

星羅「お願い……!」

男「君を殺そうとした」

星夜「…………っ」

空気が凍る。

男「眠っていた君を狙って、傷つけようとしたんだ」

星羅「……言わないで……」

男「でもね」

男は星羅を見る。

男「星羅ちゃんが、それを見つけた」

星夜「…………」

男「君を守ろうとしたんだよ」

星羅「…………っ」

男「眠っている君を抱きしめて、自分が代わりに傷を負った」

星夜「……嘘だ」

男「嘘じゃない」

來夢「……そんな……」

朔夜「……星羅が……」

星夜「…………」

男が星羅の服の一部を少し持ち上げる。

そこには、幼い頃についた傷の痕が残っていた。

星夜「…………」

目を見開く。

星夜「……何だよ、それ」

星羅「……見ないで……!」

必死に身体を捻る。

星羅「星夜、見ないで……!」

瑛翔「……待てよ」

瑛翔が低く呟く。

瑛翔「じゃあ、その傷って……」

星夜「…………」

声が出ない。

自分が知らなかった。

ずっと知らなかった。

星羅が自分を守るために――。

自分の代わりに傷を負っていたなんて。

星夜「……嘘だろ」

男「本当だよ」

星夜「…………」

男「君を守ろうとして、星羅ちゃんは怪我をした」

星羅「……やめて……」

男「だから俺は、星羅ちゃんがまた君を庇わないように――」

男が鎖を見る。

男「星羅ちゃんだけを、鎖に繋いだ」

星夜「…………」

男「君を守るために暴れるからね」

星羅「…………」

星羅は俯いた。

男「星羅ちゃんは、ずっと鎖に繋がれていた」

星夜「…………」

男「君が何も知らないまま眠っている間もね」

星羅「……やめて……」

男「星羅ちゃんはずっと君を守ろうとしていた」

星羅「お願い……!」

男「自分がどれだけ傷ついても」

星羅「……っ」

男「どれだけ怖くても」

星羅「もう……言わないで……!」

男「君だけは守ろうとしてたんだよ」

星夜「……俺の……せいで……?」

男「そうだよ」

星夜「…………」