月影に咲く、一輪の華

星夜「…………」

目の前の光景に、星夜の身体が完全に固まった。

壁に固定された星羅。

両手には鎖。

力なく項垂れた頭。

その姿が――幼い頃の記憶と重なる。

星夜「……嫌だ」

一歩、後ろへ下がる。

星夜「……やめろ……」

男「どうしたの?」

男が楽しそうに笑う。

男「懐かしいでしょう?」

星夜「…………」

耳鳴りがする。

あの日と同じ鎖の音。

あの日と同じ部屋。

あの日と同じ――星羅の姿。

星夜「……姉ちゃん……」

小さく呟いた瞬間。

星羅の指先が、ほんの少し動いた。

星夜「……!」

星羅「…………」

まだ意識は戻らない。

それでも、星夜には分かった。

生きている。

星夜「……姉ちゃん!!」

駆け出そうとする。

だが――男たちが一斉に立ちはだかった。

黒羽「星夜、待て!」

星夜「どけ!!」

男「近づかせると思う?」

星夜「退けぇぇぇ!!」

拳を振り抜く。

一人を殴り飛ばす。

続けてもう一人の腕を掴み、身体ごと投げ飛ばす。

ドンッ!!

星夜「姉ちゃんに触るな!!」

豹牙「星夜!」

豹牙も横から突っ込む。

豹牙「俺らが道開ける!」

ドガッ!!

男を蹴り飛ばす。

來夢「右、来るぞ!」

朔夜「分かってる!」

月影が一気に前へ出る。

その後ろでは朱雀も動いた。

紅蓮「――朱雀、行くぞ」

瑛翔「了解!」

刹那「……ああ」

一気に敵へ飛び込む。

拳と蹴りが飛び交い、廃工場の中に激しい音が響き渡る。

ドゴッ! バキッ! ガンッ!

紅蓮「邪魔だ!!」

一人を壁へ叩きつける。

瑛翔「こっちは任せて!」

刹那「……行け」

星夜「……!」

道が開く。

星夜は迷わず走った。

星夜「姉ちゃん!!」

けれど――。

男が星羅の前へ立つ。

男「……そんなに会いたかった?」

星夜「…………!」

男「でも、まだ返さないよ」

星夜「……お前……!」

男は星羅の髪に触れる。

その瞬間。

星夜「触るなぁぁぁ!!」

怒りに任せて突っ込もうとする。

だが――。

黒羽が星夜の肩を掴んだ。

黒羽「待て!」

星夜「離せ!!」

黒羽「今のお前じゃ、あいつの挑発に乗る!」

星夜「でも姉ちゃんが……!」

黒羽「分かってる!」

黒羽の視線が、鎖に繋がれた星羅へ向く。

黒羽「必ず助ける」

星夜「…………」

黒羽「だから、一緒に行くぞ」

星夜は荒い息を吐きながら、拳を握り直した。

星夜「……ああ」

そして――男の後ろ。

意識を失っていた星羅の瞼が、ゆっくりと動いた。

星羅「…………」

まだ、声は出ない。

けれど――その瞳が、ほんの少しだけ開く。

そして最初に映ったのは――必死に自分の名前を叫んでいる星夜だった。

星羅「……せい……や……」

かすかな声。

男「…………」

星夜「――姉ちゃん!?」

その声を聞いた瞬間。

星夜の目に、涙が浮かんだ。