月影に咲く、一輪の華

男「……もう来たのか」

遠くから響く、激しい足音。

星羅「……星夜……!」

星羅は立ち上がろうとする。

けれど、男が一歩近づいた。

星羅「……っ」

男「まだ行かせないよ、星羅ちゃん」

星羅「離して……!」

男「せっかくここまで来たんだから」

男が手を上げる。

星羅「……!」

次の瞬間――。

トンッ。

首元に手刀を受け、星羅の身体から力が抜ける。

星羅「……っ……」

そのまま、男の腕の中へ崩れ落ちた。

男「……おやすみ、星羅ちゃん」

男は意識を失った星羅を抱き上げる。

そして、部屋の奥へ運んでいく。

そこにあったのは――。

古びた壁。

そして、床に置かれた鎖。

男「…………」

鎖を手に取る。

カチャ……。

金属音が、静かな部屋に響いた。

まるで昔と同じように。

男は星羅を壁の前へ連れていき、両手を鎖で固定する。

さらに身体が動かないように、足元にも鎖を繋いだ。

星羅「…………」

意識は戻らない。

男は少し離れたところから、その姿を眺める。

幼い頃と同じように。

壁に固定された星羅。

まるで、自分だけのものとして飾るように。

男「……これだ」

満足そうに呟く。

男「やっぱり、星羅ちゃんはこうしてる方が似合う」

そして――。

廃工場の外。

ドンッ!!

黒羽たちが入口を突破する。

黒羽「星羅はどこだ!!」

豹牙「出てこい!!」

紅蓮「隠れてねぇで顔出せよ!!」

男たちが次々と現れる。

月影と朱雀が一斉に構える。

星夜「……姉ちゃんは!?」

男「…………」

誰も答えない。

星夜「答えろ!!」

その時。

建物の奥から――。

カチャ……

鎖の音が響いた。

星夜「…………」

聞き覚えのある音。

身体が一瞬で強張る。

星夜「……まさか」

黒羽「星夜?」

星夜「…………」

さらに奥から、男の声が響く。

男「来たんだね」

そして――。

重い扉がゆっくり開いていく。

その向こうに見えたのは――。

鎖に繋がれ、意識を失った星羅の姿だった。

星夜「…………っ」

息が止まる。

あの日と同じ。

自分の目の前に、鎖に繋がれた姉がいる。

けれど今度は――。

星羅の前に立ちはだかるのは、幼い頃の自分ではない。

黒羽。

豹牙。

來夢。

朔夜。

夜凪。

そして――。

紅蓮を始めとする朱雀。

男はその光景を見渡して、笑った。

男「……どう?」

男「昔と同じだろ、星夜くん。」