月影に咲く、一輪の華

車は山道をさらに奥へ進んでいく。

後部座席では、星羅がまだ意識を失ったまま横たわっていた。

男「…………」

バックミラー越しに、何度も星羅を確認する。

やがて車が古びた建物の前で止まった。

男「着いたよ、星羅ちゃん」

返事はない。

男は車を降り、後部座席のドアを開ける。

そして星羅を抱き上げた。

男「……軽いな」

そのまま建物の中へ運んでいく。

そこは、人の気配がまるでない古い廃工場だった。

薄暗い室内。

男は奥へ進み、鉄製の扉を開ける。

その先には――。

何もない部屋と、一脚の椅子。

男は星羅をそこへ座らせる。

そして、意識を失った星羅の髪をそっと撫でた。

男「……覚えてる?」

星羅「…………」

男「この場所じゃないけど……似たような場所だったよね」

男は楽しそうに笑う。

男「昔も、こうやって眠ってた」

星羅「…………」

男「でも今度は、起きても誰も助けに来ない」

その言葉に、男は満足そうに笑った。

一方――。

月影と朱雀は、必死に星羅の行方を追っていた。

瑛翔「紅蓮から連絡来た!」

黒羽「何て?」

瑛翔「朱雀の奴らが、怪しい車を見つけたらしい!」

豹牙「場所は!?」

瑛翔「山道!」

夜凪「……やっぱり」

朔夜「急ぐぞ」

星夜「…………」

星夜は何も言わず、バイクに跨った。

來夢「星夜、無茶すんなよ」

星夜「……分かってる」

けれど、その顔には焦りが滲んでいる。

星夜「絶対……姉ちゃんを見つける」

そして――。

さらに少し遅れて。

一台の黒いバイクが彼らの後ろから走り出した。

瑛翔「……?」

振り返る。

瑛翔「……あれ?」

バイクの後ろに乗っている男が、こちらへ手を上げた。

紅蓮「お前ら、置いてくなよ」

瑛翔「紅蓮!」

紅蓮「星羅が連れていかれたんだ」

口元に笑みを浮かべる。

けれど、その目は笑っていない。

紅蓮「――取り返すぞ」

黒羽「……ああ」

月影と朱雀。

敵対していた二つのチームが――。

初めて同じ目的のために動き出した。