月影に咲く、一輪の華

倉庫の外へ飛び出した黒羽たちは、すぐに周囲を見渡した。

けれど――。

車も、バイクも、人影すらない。

豹牙「……クソッ!」

拳を壁に叩きつける。

豹牙「どっちに行った!?」

來夢「分かんねぇ……!」

朔夜「これだけ時間が経っていれば、もうかなり離れている可能性がある」

夜凪「……いや」

夜凪が地面にしゃがみ込む。

そこには、車が急発進したようなタイヤ痕が残っていた。

夜凪「こっちだ」

黒羽「分かるのか?」

夜凪「ああ。タイヤの向きがこっちを向いてる」

豹牙「じゃあ追える!」

星夜「今度こそ……」

拳を握りしめる。

星夜「俺が見つける」

豹牙「……分かった」

豹牙が星夜の肩を叩く。

豹牙「じゃあ一緒に行くぞ」

星夜「……ああ」

その瞬間――。

ブロロロロ……!

遠くからエンジン音が聞こえた。

全員が振り向く。

一台のバイクが、こちらへ近づいてくる。

黒羽「……誰だ?」

バイクが目の前で止まる。

ヘルメットを外したのは――。

瑛翔だった。

瑛翔「……何があった?」

黒羽「星羅が攫われた」

瑛翔「…………は?」

一瞬、瑛翔の顔から笑みが消える。

瑛翔「星羅ちゃんが……?」

豹牙「さっき襲われた。相手はかなりの人数だった」

瑛翔「……紅蓮に連絡する」

來夢「朱雀も動いてくれるのか?」

瑛翔「当然だろ」

瑛翔がスマホを取り出す。

瑛翔「昨日、俺が伝えた『星羅ちゃんを見てた奴』――」

全員が瑛翔を見る。

瑛翔「たぶん、そいつだ」

夜凪「……!」

瑛翔「俺らの下っ端が見た奴と、今日ここを監視してた奴が同じなら……」

瑛翔は倉庫を見る。

瑛翔「ずっと星羅ちゃんを追ってたってことになる」

黒羽「……つまり」

瑛翔「ああ」

瑛翔の表情が険しくなる。

瑛翔「最初から星羅ちゃんを攫うつもりだった可能性が高い。」

星夜「…………」

その言葉を聞いた瞬間、星夜の拳が震えた。

星夜「……絶対に見つける」

そして――。

その頃。

走り去った車の中では。

星羅「…………」

意識を失ったまま、後部座席に横たわっていた。

男はバックミラー越しに星羅を見る。

男「……やっと二人きりになれたね、星羅ちゃん」

その口元に、ゆっくり笑みが浮かぶ。

男「今度は誰にも邪魔させないよ」

車は、人の少ない山道へと入っていった。