月影に咲く、一輪の華

星夜「――星羅ぁぁぁ!!」

閉ざされた扉に向かって、何度も何度も名前を叫ぶ。

星夜「星羅!! 姉ちゃん!! 戻ってこいよ!!」

立ち上がろうとする。

けれど、身体に力が入らない。

それでも這うように扉へ向かう。

星夜「待て……待ってくれ……!」

床に手をついて、必死に前へ進む。

頭の中には、もう今の光景だけじゃない。

幼い頃の記憶が、何度も何度も蘇っていた。

暗い部屋。

冷たい床。

鎖に繋がれた星羅。

そして――自分の目の前から、連れていかれる姉。

星夜「……嫌だ……」

呼吸が激しくなる。

星夜「また……また同じになる……!」

豹牙「星夜!」

星夜「触るな!!」

豹牙が近づこうとした瞬間、星夜が激しく振り払う。

星夜「俺が……俺が助けなきゃ……!」

來夢「星夜、落ち着け!」

星夜「落ち着けるわけねぇだろ!!」

叫び声が倉庫中に響く。

星夜「星羅が連れていかれたんだぞ!!」

拳を床に叩きつける。

星夜「まただ……!」

星夜「また俺の目の前で……!」

呼吸が乱れ、涙が溢れる。

星夜「俺、何もできなかった……!」

朔夜「星夜……」

星夜「昔もそうだった!!」

その言葉に、全員が息を呑む。

星夜「姉ちゃんが鎖に繋がれてた時も……!俺は何もできなかった!!怖くて……姉ちゃんに助けてって言っただけだった!!」

頭を抱える。

星夜「なのに……また……!俺の目の前で星羅が……!」

声が掠れる。

星夜「……嫌だ」

身体を震わせながら、何度も首を振る。

星夜「星羅……星羅……」

まるで名前を呼び続ければ、戻ってくるとでも思っているように。

星夜「星羅ぁ……!」

黒羽「…………」

黒羽は拳を握りしめる。

目の前にいるのは、普段の生意気でツンとした星夜じゃない。

幼い頃、姉を失う恐怖に怯えていた少年そのものだった。